熱海市、水道料金値上げ案 中長期見据えた説明を【東部 記者コラム 湧水】

 熱海市は2024年度、水道料金を平均17%値上げする案を市行財政審議会に諮問している。委員からは、人口減などで事業収入が減り続ける中で施設の維持、更新に必要な財源を確保しなければならない事情に理解を示しつつ、市民生活への影響を懸念する声が相次ぐ。水道を取り巻く環境はこの先も厳しく、市は数年先も値上げの必要があるとみる。市民に理解を得るには、中長期を見通した議論と丁寧な情報提供が不可欠だ。
 人口減少などの影響で、同市の有収水量はピーク時の1990年度に比べ、2021年度時点で約48%減少した。一方で、高度経済成長期に敷設した管路などの更新費は上昇し続けている。
 市は水道事業の支出の大半を占める県営駿豆水道からの受水費を減らしたり、料金徴収などの業務を外部委託したりして経費削減に努めている。だが、赤字を吸収するには限界が来ている。試算によると、現行料金では24~26年度の3年間で9億円余りの赤字が見込まれるという。
 一方で、物価高騰のさなか、急激な値上げは市民生活に大きな影響を与える。同市の水道料金は07年に6%、09年に9%、11年に4%と小刻みに値上げしてきたが、それ以降は料金を据え置いてきた。コロナ禍で観光客が激減するアクシデントはあったものの、人口動態などの傾向は予測できていたはずだ。このため、今回の17%値上げ案に対する唐突感は否めない。
 審議会では段階的な値上げや一般会計からの繰り入れにより、市民の負担をなるべく抑えるよう求める声が多い。
 仮に段階的に値上げするとしても、送水管などの施設更新時期は待ってくれない。一時的に市民の負担を軽減しても、帳尻を合わせるためにどこかで大幅な値上げが必要だ。独立採算が原則の水道事業に一般会計からの繰り入れを延々と続けるわけにもいかないだろう。市は安全な水を安定的に供給するために、こうした事情を市民に知ってもらう必要がある。
 同市では伊豆山の復旧復興事業を巡っても、説明不足を指摘する被災者が多い。市に対する信頼を回復させるために、あらゆる事業で丁寧に説明する姿勢が求められる。

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