飲めなくても大人の酒場満喫 静岡県内、新スタイルのバー続々 バブルカクテル、カラフルなクリームソーダ...若者世代の集客図る

 若い世代を中心に「アルコール離れ」が進む中、大人の酒場の雰囲気を気軽に味わえる新しいスタイルのバーが静岡県内で増えている。多彩なノンアルコールのカクテルを用意したり、カラフルなクリームソーダを昼間に提供したりと、飲酒の有無にとらわれず幅広い層が楽しめる店づくりを進め、集客を図っている。


 カウンターに出されたカクテルグラスの上には、シャボン玉のような泡(バブル)のドームが添えられている。バーテンダーの村田祥一さん(28)がそっと指で触れると、バブルがぱっと弾け、華やかな柑橘の香りが漂った。「このバブルカクテルはノンアルコールでもつくれます。バーにはお酒を飲まない人も楽しめる魅力があるんです」。

充実のモクテルとバブルカクテルの新体験を提供

 村田さんが営む静岡市葵区のバー「ミューザミューズ(Muse Amuse)」では、「バブルカクテル」やノンアルコールのカクテル「モクテル」を目当てに、若者や女性が多く来店する。村田さんによると、モクテルは「似せた、真似た」という意味の英語「モック」と「カクテル」をつなぎ合わせた造語で、同じく若者のアルコール離れが進むロンドンなどを中心に世界的に流行した。ミューザミューズは常時30種以上のモクテルを提供している。アルコールが苦手な人や、お酒を飲む人でも2軒目、3軒目のドリンクとして味わう人もいるという。 photo01 ノンアルコールの白ワインにカシスシロップを加えた「キールゼロ」。 カクテルの「キール」とほぼ同じ風味や色合いを楽しむことができるという。
 ミューザミューズは2021年に開業。村田さんは新型コロナ禍の状況を振り返りながら話した。「バーは日常と非日常が混ざり合う特別な空間。お酒が飲めるかどうかに関わらず、コロナで離れてしまった場所やものを共有することで、より互いの関係性が深められたらうれしい」 photo01 アルコールの有無など一人ひとりの希望に沿うドリンク提供をする村田さん
クリームソーダを飲みながらバーの雰囲気を体験「呵呵」
 浜松市中区のバー「呵呵(カカ)」は日中も店を開き、「100種類のクリームソーダ屋」を展開している。モクテル用のシロップを使い、多数の味を実現した。アルコールは含まれないため、若者や女性、高校生など、通常ならバーを訪れない人たちも数多く足を運んでいる。昼間の営業をきっかけに夜のバーに訪れる客や、飲酒の有無に関係なく店を利用するケースも増えてきているという。 photo01 バーカウンターで提供されるクリームソーダ=浜松市中区のバー「呵呵」(公式Instagramより)
 バーテンダーの加納詩織さん(36)は「バーの雰囲気を楽しんでもらうことに、アルコールの有無は関係ない。心の中をさらけ出せる場所として、多くの人に魅力を知ってもらいたい」と笑顔を見せた。 photo01 モクテルから発想を得た100種のクリームソーダを作る加納詩織さん(加納さん提供)
広がる「お酒との向き合い方」とバーの在り方
 ノンアルコールの飲み物を積極的に提供する新たなバーの展開は、あえて酒を飲まないという生活スタイル「ソバーキュリアス」への関心の高まりも背景にある。英語の「ソバー」(禁酒、しらふ)と「キュリアス」(興味を持つ)を組み合わせた言葉で、欧米の若者を中心に広がっている。
 日本でも若者を中心にアルコール離れの動きが進む。厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」では、飲酒の頻度について「ほとんど飲まない」「やめた」「飲まない(飲めない)」と答えた20〜29歳は56.3%となっている。ニッセイ基礎研究所の2022年の調査では、若い世代のリスク回避思考の高まりや娯楽の多様化などもアルコール離れを後押ししていると推測した。

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