伊豆のテングサ守れ! ところてん消費拡大で一石 静岡県東部の製造業者ら

 風呂上がりに、ところてんはいかが-。県東部・伊豆地域の製造販売業者らでつくる伊豆ところてん倶楽部が、新たなところてんの消費拡大策に挑んでいる。風呂上がり専用のたれを試作し、年内に発売する予定。ところてんをPRし、その原料で日本一良質とされながら減退が続く伊豆のテングサを守ろうと意欲を示す。

試作した風呂上がり専用たれをかけ、ところてんを振る舞うメンバー=6月上旬、沼津市
試作した風呂上がり専用たれをかけ、ところてんを振る舞うメンバー=6月上旬、沼津市

 語呂合わせから「ところてんの日」と定めた6月10日、沼津市の温泉施設で開いた試食会。同市戸田地区のタチバナのピューレを麺つゆに混ぜたたれを、水分たっぷりのところてんにかけて振る舞った。来店客の若林司さん(32)=富士市=が「さっぱりしておいしい」と話すなど評判は上々。寄せられた意見を参考に改良して製品化する。
 熟練の海女が海中に潜って収穫した伊豆のテングサは業界内で評価が高く、老舗菓子屋や高級料理店でも使われる。だが、近年は黒潮の蛇行や海水温上昇で収穫量が減少し、海女の高齢化が進む。かつて都道府県別で1位だった出荷量も近年は愛媛県の後塵(こうじん)を拝している。
 2008年ごろに発足した同倶楽部は、ところてんやテングサの認知度向上を目指し、イベントを定期的に開催。話題づくりにとどまらず、ところてんを食べる文化を生み出そうと、サウナ専用たれを昨年開発した。さらに多くの人に味わってもらうため、風呂上がり用を作った。
 栗原康浩代表(57)=栗原商店社長=は「香りやこし、歯ごたえがある」と伊豆のところてんをアピールする。まずは専用たれを伊豆地域の宿泊施設で提供してもらい、風呂との相性の良さを知ってもらう。「家庭でも季節を問わずに食べる習慣が根付けば」と夢を膨らませる。

 「磯焼け」で生産激減 分析
 伊豆半島沿岸は、ところてんの原料となるテングサの全国有数の産地。だが、生育環境の変化や漁業者の高齢化により生産量は激減している。
 全国漁業協同組合連合会のまとめによると、伊豆半島が大半を占める本県の2022年のテングサ生産量は40トン。約40年前の1割にも満たない。
 県水産・海洋技術研究所伊豆分場(下田市)は、海水温上昇と黒潮蛇行により海藻が枯死する「磯焼け」が発生し、海藻を食べる生物が活発化していることなどが要因と分析する。

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