「男社会の建設業」払拭へ スエヒロ工業(沼津)、性の多様性勉強会

 従業員30人の建設業スエヒロ工業(沼津市)が、性の多様性の理解促進に力を入れている。全社員向けの勉強会を開くなど、男社会とされる建設業界で性別に関係なく働きやすい環境づくりを進める。任意団体が定める評価指標で大手企業と並び高い評価を受けた。

性の多様性に関する勉強会で意見を交わす社員=6月、沼津市のスエヒロ工業本社
性の多様性に関する勉強会で意見を交わす社員=6月、沼津市のスエヒロ工業本社

「配慮足りず傷つけたかも」意見交換から気付き  さまざまなセクシャリティの人が安心して生活できる環境をつくるには―。6月上旬に開かれた勉強会。参加者はグループになり「困ったことを気軽に言える雰囲気をつくる」などと意見を交わした。トランスジェンダーの体験談を共有し、社員の一人は「思っていた以上に性は多様だと知った。配慮が足りず傷つけてしまっていたかも」と過去を振り返った。
 事業拡大に伴う人手不足解消と離職防止を目的に2019年に働き方改革を本格化。当初は女性の視点を意識し、女性が働きやすい企業として認定マーク「えるぼし」を取得。さらに優れた環境づくりを目指すには、男性・女性という意識を捨て「誰もが働きやすい」という視点が大切だと考え、一部社員が取り組みをスタートした。
LGBTQの言葉の意味から  手始めに実施した社内アンケートでLGBTQの言葉の意味を知る社員は半数に満たず、性の多様性を学ぶ雰囲気は乏しかった。社内のトレーニングジムのトイレを性に関係なく使える「誰でもトイレ」に変え、あらゆる性のパートナーも慶弔休暇の対象にするなど施設や規則を変えた。「強制するのではなく一緒に考えてもらおう」と勉強会を始めた。
 職人気質で口べたな社員が多く、普段は仕事に関する会話がほとんど。意見交換が成り立つか心配されたが、予定時間を過ぎても議論が続いた。開催を主導した大野友美取締役(41)は「お互いの本音をぶつけ合ったことで、性に限らず相手を認め合うきっかけができた」と話す。
大企業とともに「PRIDE指標」認定  桜井弘紀社長(37)は「幸せの価値観が違う社員同士が認め合うことで、それぞれの幸せにつながる」と理想を語る。22年には職場での性的マイノリティーに関する取り組みを評価する「PRIDE指標」で、清水建設や大林組といった大企業とともにシルバー認定を受けた。今後は活動の範囲を協力会社にも広げたい考えだ。

企業経営研究所(長泉町)磯辺剛彦理事長の話 コストと時間を使って性の多様性に関する社員向け勉強会まで開いている中小企業は他にない。性によって物事を見る視点や距離感が異なる。現在のように事業環境が大きく変化している時こそ多様化を進め、企業経営を複合的に考えるべきだ。性の多様化は大企業よりも経営者の意思が社内に伝わりやすい中小企業の方が進むだろう。取り組みが広がると期待している。

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