静岡市シェアサイクル3年 事業も人も「快走」 日常の足として定着

 静岡市が展開する官民連携のシェアサイクル事業「PULCLE(パルクル)」は事業開始から3年が経過し、順調に成長を続けている。全国的には苦戦する地域が多い中、5月の月間利用回数は、事業が始まった2020年6月の約9倍に増加。運営関係者は「市民の新しい公共交通インフラとして定着した」とみて、さらなるサービスの展開、拡大を目指す。

市民の日常の足として定着したパルクル。今後は利用データなどを元に新たなサービス展開も模索していく=6月下旬
市民の日常の足として定着したパルクル。今後は利用データなどを元に新たなサービス展開も模索していく=6月下旬


 「待ち時間なく乗れ、バスやタクシーより安い。電動なのですいすい走れるのもうれしい」。6月下旬、JR静岡駅北口。大学へ向かうためパルクルを利用した静岡大4年の長井大陸さん(21)が笑顔をみせた。
 開始初月に約3200回だったパルクルの月間利用回数は、今年5月には約2万8千回になった。運用する電動自転車の台数は94台から600台、電動自転車を駐輪するポート数は47カ所から約200カ所に拡大した。利用に必要なアプリのダウンロード数は3万8千件を超え、現在も月に1500人程度が新規会員登録を行っているという。
 ポートは静岡市内のJR各駅から2キロ圏内を中心に設置されている。利用者データの分析によると、利用時間帯は午前7~9時と午後6~8時に集中し、利用区間は市内の大学と最寄り駅との往復が特に多い。
 国土交通省の19年3月の調査では、シェアサイクルを導入する国内22都市のうち半数以上がマイナス収支になるなど事業の継続が課題になっている。静岡市のパルクルが成長している背景について、市から運営を受託するTOKAIケーブルネットワーク(沼津市)の山内崇資企画部長は、市有地や民間企業用地の無償提供、サッカーJ2清水との連携など、官民一体となり市全体で取り組んだ点が強みになったと分析。「地元に根付いたサービスを市民が評価してくれた」と喜ぶ。
 20年の国勢調査によると、静岡市の通勤・通学での自転車利用率は17・8%で、政令指定都市では全国4位。市交通政策課の鳥居塚安伸係長は「市は地形がなだらかで気候も温暖。自転車利用に適した特性がパルクルの追い風になった」とみる。
 一方、4月の改正道交法施行による自転車乗車時のヘルメット着用努力義務化への対応など課題も残る。利用者にはアプリや看板で着用を呼びかけている。
 今後、同社は移動情報のデータ活用やポートの災害時利用など新たなサービス展開も検討している。
 山内企画部長は「『市民のために』という思いに共感する人々の支えがあった。今後もパルクルを基盤に静岡を盛り上げていきたい」と思いを語った。
 

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