マッチ箱で巡る 昭和初期の沼津 市制100周年記念 市立図書館で展示
沼津市立図書館は8月3日まで、昭和初期の市街地にあった飲食店や映画館のマッチ箱ラベルを同館4階で展示している。同館の職員が、親族のコレクションを借り受け、図書館の郷土資料などからラベルに描かれた店の当時の所在地を特定。地図に落とし込み、およそ90年前のモダンで華やかな街並みがマッチ箱を通して浮かび上がった。
展示品は、同市の故土井正路さんが所蔵していたコレクション。職員の山本晴望さん(65)が、親族に土井さんのひ孫がいる縁で借り受け、市制100周年を機に展示を企画した。1万点におよぶラベルのうち、約60店が沼津市内の店舗で、保存状態が良く、色あせずに残っていたという。
展示しているラベルには、沼津駅の駅弁で知られる「桃中軒」のほか、すき焼きの「古安」(本町)、そば店「安田屋」(同)など、現存する老舗のマッチもある。女性従業員がコーヒーや洋酒類などを提供し、大正後期から昭和初期に流行した社交飲食店「カフェー」のラベルも多い。
山本さんによると、当時の店舗はマッチ箱が主な宣伝媒体だったが、使い捨てられたため、残りにくいという。「デザインセンスが優れ、大正ロマンの名残が感じられる。昭和初期の沼津にはモダンな店が多く、活気があったことが分かった」と驚く。
同館が所蔵する当時の店舗の資料と、マッチを突き合わせて場所を特定し、1930年代に店があった場所を白地図に示した。1951(昭和26)年発行の中心部の商店を記した地図も並べ、沼津駅前の繁華街が現在に比べ、約500メートル南側にあったことも分かるよう展示を工夫した。山本さんは「空襲に遭った市街地は、戦前の様子が分かる写真もあまり残っていない。ラベルから、当時の華やかな街を想像すると面白い」と往時に思いをはせた。
(東部総局・菊地真生)