教員の精神疾患療養、静岡県内で急増 コロナ禍影響か

 精神疾患で長期療養する教職員が新型コロナウイルス禍以降、静岡県内で大幅に増加したことが、24日までの県教委への取材で分かった。長期療養者は特別支援学校の教員や、新規採用からまだ年数の浅い教員に多い傾向があった。近年増加が続いていた中、新型コロナの影響で教職員の業務量やストレスが増え、状況を加速させたとみられる。

精神疾患で長期療養となった静岡県内教職員の2022年度の状況
精神疾患で長期療養となった静岡県内教職員の2022年度の状況
精神疾患により長期療養した静岡県内の教職員数
精神疾患により長期療養した静岡県内の教職員数
精神疾患で長期療養となった静岡県内教職員の2022年度の状況
精神疾患により長期療養した静岡県内の教職員数


特別支援学校で突出、専門家が多忙化に警鐘  県教委教育厚生課の調査によると、県内公立学校と県教委事務局で精神疾患を原因に30日以上連続の長期療養をした教職員は2022年度287人。コロナ禍が深刻化して2年目の21年度は263人。20年度210人、19年度204人と比べ急増した。全体の教職員数は減少傾向にあり、在職者に対する長期療養者の割合(在職者比率)は18年度から上昇を続けている。
 同課は増加の要因をコロナ禍の影響と推察する。教職員自身がコロナに罹患(りかん)し、児童生徒に感染させてはいけないとの重圧や、感染防止のため形態変更した授業への対応、教室の消毒作業などで業務負担の増大につながったという。教員同士で困り事を相談する時間も十分に取りづらかったとし、「ストレスを抱え込んでしまう状況が続いた」と指摘する。
 22年度の長期療養者の状況を校種別にみると、特別支援学校が60人(前年度比17人増)、在職者比率2・33%で、小学校1・04%、中学0・90%、高校0・81%と比べて突出していた。特別支援学校での増加が顕著だった背景について、教育厚生課の内山成一課長は児童生徒が感染した際のリスクの大きさを挙げ「特別支援学校はより注意が求められる職場。新型コロナの感染症法上の位置付けが引き下げられても、対策を緩められない部分がある」と分析する。
 精神疾患による長期療養者のうち、新規採用または異動による着任から1~3年で療養に入った教職員は77%を占めた。在職者比率を年代別でみると、20代が2・04%と最も高く、年代が上がるにつれて割合は下がった。全体として女性は男性より比率が高く、20代では約2倍の差があった。
 教員のメンタルヘルスに詳しい静岡大教育学部の鎌塚優子教授は「子どもの貧困や虐待、保護者対応など学校の仕事が増えている中で、コロナ禍が拍車をかけた」と指摘。「学校現場で伝統的に当然のようにやっている仕事を見直すことが必要。社会にも理解が求められる」と教員の多忙化に警鐘を鳴らした。
 (政治部・大沼雄大)  静岡県教委、支援メニュー強化  静岡県教委は長期療養する教職員の増加を受け、2023年度は特別支援学校や新規採用者、異動1年目の教職員に対する支援メニューを強化した。
 特別支援学校では新たに、初めての異動、20代といった条件に該当する教職員に対し、年間2、3回ほどの面談を行う。経験豊富な特別支援学校の元校長らが仕事や職場の状況、困り事を聞いてサポートする。
 高校への出張形式のストレスカウンセリングもメニューに加えた。これまでは外部委託のカウンセラーが東中西部に1カ所ずつある専用ルームでの面談や電話、オンラインなどで希望者の相談に応じていたが、23年度は、新規採用者と異動による赴任者が多い高校を県教委が指定し、カウンセラーが出向く。

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