生態系影響で代償措置 JRが対応表提示 リニア国交省会議

 リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境に与える影響について議論する国土交通省の第11回専門家会議が26日、東京都内で開かれ、JR東海は、大井川上流部の沢の生態系に影響が生じた場合の対応表を示した。トンネル掘削段階で対策を講じても減水を止められない場合は、代償措置として「トンネル湧水を活用した生態系の創出」「沢の環境改善」「生物の移植・播種(はしゅ)」などを検討すると説明した。

国土交通省専門家会議の委員の主な意見※は県有識者会議委員
国土交通省専門家会議の委員の主な意見※は県有識者会議委員

 JRは大井川上流部の沢35カ所のうち、希少種が生息したり、流量減少が予測されたりする11カ所を重点的なモニタリングを実施する沢として選定した。工事実施段階で、トンネル湧水を低減する工法「薬液注入」などを追加で施しても、動植物へ影響を及ぼす可能性が高い場合は、県や静岡市に説明した上で代償措置の実施を判断する。損なわれた環境に代わって新たな環境を創出する「生物多様性オフセット」の考え方を踏まえるとした。
 代償措置の手法に挙げた「トンネル湧水を活用した生態系の創出」は、椹島(さわらじま)ヤード近くに流路を造成し、湧水を好む生物の生息環境を新たにつくる。「沢の環境改善」については担当者は会議後、取り組み事例として周囲の樹木を伐採して日当たりを良くすることや、生物が移動しやすくなるよう河川との合流部を改変することなどを示した。
 県の森貴志副知事は、沢の影響分析の議論が不十分で、代償措置に議題が移ることは拙速との認識を述べた。委員からは「薬液注入の効果や環境への影響を示すべき」などの注文が出たが、考え方自体に異論は出なかった。
 会議では沢の水生生物、高標高部の植生、工事がもたらす発生土やトンネル湧水への影響について委員がそれぞれ意見を述べた。

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