療養中の子支える「ファシリティ犬」 癒やす存在、効果に太鼓判 静岡県立こども病院調査

 療養中の子どもを支える「ファシリティドッグ」の存在が、終末期の緩和ケアや、恐怖を感じがちな治療や処置の場面で、大きな役割を果たしていることが、27日までの県立こども病院(静岡市葵区)などによる合同調査で分かった。医療従事者の間で「癒やし効果」は長らく指摘されていたが、病院関係者へのアンケートを通じ、数値で裏付けられた。調査結果は論文として国際科学誌に掲載された。

ファシリティドッグと交流する子ども=静岡市葵区の県立こども病院(シャイン・オン・キッズ提供)
ファシリティドッグと交流する子ども=静岡市葵区の県立こども病院(シャイン・オン・キッズ提供)
ファシリティドッグに関するアンケート調査
ファシリティドッグに関するアンケート調査
ファシリティドッグと交流する子ども=静岡市葵区の県立こども病院(シャイン・オン・キッズ提供)
ファシリティドッグに関するアンケート調査

 調査はファシリティドッグを育成するNPO法人シャイン・オン・キッズ(東京都)などと実施し、同病院で活動を見た医療従事者ら270人の回答を分析した。終末期の緩和ケアについては癒やし効果があると答えた人が73%で、効果を強く感じた人の割合が最も多かった。自由記述欄には「終末期の子に笑顔がみられた」「子どもが求めていた」「本人や家族が苦痛から逃れ、一家団らんのように見えた」などと記入され、患者や家族に幸福感をもたらすことがうかがえた。
 論文を執筆した同NPO法人研究員の村田夏子さんは「看護師資格のあるハンドラー(ファシリティドッグの指導者)が院内の各部署と連携する体制を整えたことが、緩和ケアで効果を感じている背景にある。カンファレンス(院内の打ち合わせ)などでハンドラーが情報収集し、子どもと関わる頻度などを柔軟に判断している」とみる。
 緩和ケアに次いで高く評価された項目は「処置や治療に対する患者の協力の得やすさ」で、回答者の73%が効果を実感していた。ファシリティドッグが子どもに付き添うことで、子どもが怖がらずに手術室まで歩いて行ったり、痛みを伴う処置にスムーズに対応したりしている。院内の多くの看護師がファシリティドッグの扱い方に関する知識を習得しているため、病院関係者が敬遠せず多用できたことも効果を感じられた背景にあるとみられる。
 同病院は2010年、全国で初めてファシリティドッグを導入し、現在は3代目の「タイ」が常駐する。「犬を見た子どもが今日初めて笑った」などと保護者の評判は良く、新型コロナウイルス禍でも活動を続けてきた。同NPO法人は「癒やし効果が数値化されたので、全国での普及活動に生かしたい」と話している。
 (社会部・大須賀伸江)

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