三遠南信道青崩峠トンネル貫通 掘削4年 水窪側所長「経験ない」難工事振り返る

 浜松市天竜区水窪町と長野県飯田市で建設が進む「青崩峠トンネル(仮称)」で5月末、最も難関とされていた掘削工事が約4年の期間を経て完了した。過去に一度断念されていた工事だったが、トンネルを覆う土の強い圧力や複雑な地層を最新技術で突破した。今後も舗装や照明設備の設置といった工事が残る。静岡県側(池島トンネル)を担当した建設会社安藤・間(東京都)の池島トンネル作業所の小林雄二所長は「ほっとした。高い技術で乗り越えることができた」と苦労を振り返った。

掘削作業が完了した青崩峠トンネル(仮称)の内部(国土交通省飯田国道事務所提供)
掘削作業が完了した青崩峠トンネル(仮称)の内部(国土交通省飯田国道事務所提供)
青崩峠トンネル(仮称)の掘削工事を振り返る小林雄二所長=7月上旬、浜松市天竜区水窪町
青崩峠トンネル(仮称)の掘削工事を振り返る小林雄二所長=7月上旬、浜松市天竜区水窪町
建設中の(仮)青崩峠トンネル
建設中の(仮)青崩峠トンネル
掘削作業が完了した青崩峠トンネル(仮称)の内部(国土交通省飯田国道事務所提供)
青崩峠トンネル(仮称)の掘削工事を振り返る小林雄二所長=7月上旬、浜松市天竜区水窪町
建設中の(仮)青崩峠トンネル

 青崩峠トンネルは浜松市と飯田市を結ぶ高規格道路「三遠南信自動車道」の一区間。同トンネルの全長は4998メートルで、安藤ハザマはそのうち2144メートルを担当。完成すると車で約30分かかっていた県境の移動が約6分に短縮される。
 トンネルは青崩峠の中を通り、中央構造線から東に約500メートル離れた位置を貫く。国は1970~80年代に一度事業化したが、当時は掘削技術が及ばず工事は膠着(こうちゃく)したままだった。
 掘削工事は2019年にスタート。国や専門家と話し合いを重ねて慎重に進めていった。掘り進めるほどトンネルを囲む山が高くなり、土の圧力(土圧)が強くなる。山の高さが300メートルを超えた辺りで、トンネルの壁に打ったロックボルトが土圧で変形し、壁から外れてしまった。さまざまなトンネル工事に携わってきた小林所長は「今まで見たことがなかった現象」と話す。強い圧力がかかる壁に対し、通常より3倍の強度がある高強度吹き付けコンクリートを国内で初採用し、課題を乗り越えた。
 岩を破壊する発破作業も慎重に進められた。地層はうねるように曲がった褶曲(しゅうきょく)構造でもろく、固い砂岩や軟らかい泥岩などさまざまな固さの地層が同じ面に存在していた。掘削しすぎると天井の岩盤が落下するリスクが生じるため、軟らかい泥岩は特に注意を払った。発破する範囲や場所を入念に選び、終盤は1日1メートルずつ進めた。
 今年5月26日午前10時10分ごろ、最後の発破作業が終わり、長野県側とつながった。小林所長は「丸4年の長さは経験になかった。青崩峠の名前の通り崩れやすくもろい地質で、これまでの工事は難しかったと思う」と話した。
 (水窪支局・大沢諒)

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