ボクシング坪井智也 拳に誓う、日本人未踏の頂 五輪でアマ2冠へ【しずスポ】

 日本アマチュアボクシング界に世界王者は5人いる。だが、世界選手権のベルトと五輪の金メダルをそろえた選手はいない。2021年世界選手権覇者の坪井智也(自衛隊、浜松工高出)が見据えるのは未踏の頂。「あと欲しいのは五輪の金だけ」。拳の先に集大成のパリがある。


技術を磨き アウトボクサーに 海外勢をなぎ倒す
 大きな転機になった一戦がある。19年日本選手権。勝てば東京五輪が決まる決勝で判定負けした。日大時代の14~17年に国内無敗、大会4連覇した第一人者は「ボクシングをやめようと思った」。
 救いは、20年からコロナ禍で大会がなくなり、冷静に自己と向き合えたこと。それまで好戦的なインファイトで国内を圧倒してきたが、海外ではポイントを稼げていない。考え抜いた末に「テクニカルなアウトボクシング」という新たなスタイルにたどり着いた。
 感覚で打っていた一つ一つのパンチの基礎技術を徹底的に追求。その過程で「洗練された選手ほど、わずかな動きに反応する。フォーム、角度、重心の位置を細かく操れれば精密機械のような相手も狂わせられる」と気付いた。21年世界選手権で海外の強豪をなぎ倒し進化を証明。今年は5位ながら、リオ五輪覇者のハサンボイ・ドゥスマトフ(ウズベキスタン)に肉薄した。
 挫折したからこそたどり着けたボクシングの深淵(しんえん)。今は心から「あの時、負けて良かった」と思う。もし東京五輪に出ていたら-。「ただ五輪に出ただけ。1回戦で負けてボクシングをやめていた」

9月のアジア大会 決勝進出で悲願のパリ切符
 パリ五輪予選を兼ねる杭州アジア大会(中国、9月)の日本代表に決まった時、「もう国内予選をやるつもりは一切ない」と宣言した。決勝に残れば悲願の五輪が決まる。小学6年で地元ジム「リード」に入門した時から目標は「アマの世界王者」。かつてのライバルがプロ転向し、脚光を浴びる姿を目にしても自分の道を突き進んできた。「対戦相手を選べないトーナメントを勝ち抜かなければならないアマの王者こそ本当の世界最強」。強烈なプライドを胸にリングに上がる。(山本一真)

浜松工高出身の27歳
 つぼい・ともや 1996年3月25日、浜松市東区出身。浜松工を経て日大に進み、関東大学リーグで20連勝4年間無敗を達成。2014年から日本選手権ライトフライ級を4連覇した。21年世界選手権バンタム級で日本人初優勝を果たし、23年はフライ級5位。自衛隊。27歳。

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