バイオトイレ 利用制限頻発 維持管理厳しく 容量超え懸念【富士山臨時支局】

 今夏の富士山では、山体の環境保全と快適な登山に欠かせない山小屋のバイオトイレに、利用制限がかかる事態が頻発している。登山者増加と山小屋従業員の人手不足により、維持管理が行き詰まっている。関係機関は体調に余裕があるうちにトイレを済ませるよう呼びかけているが、根本的な解決策は見いだせていない。

バイオトイレのおがくずの状態を確認する池田裕之代表=1日、富士宮口8合目「池田館」
バイオトイレのおがくずの状態を確認する池田裕之代表=1日、富士宮口8合目「池田館」


 1日午後3時ごろ、富士宮口8合目の池田館のトイレ10基中2基に「使用禁止」の張り紙がされていた。休憩に立ち寄る登山者たちは使える8基を順番に使い回していた。
 池田館は例年、微生物を用いるバイオトイレの処理能力が許容量に迫った時に一時的に利用を制限した。しかし今夏、池田裕之代表は日中の早い時間から制限をかけて宿泊者分の容量を確保すると決めた。「今夏の場合、基準値に迫ってからでは遅い」と判断の理由を語った。
 静岡県によると、県内3ルートの山小屋には大便用92基、小便用53基がある。バイオトイレは一般的に、便や尿をおがくずなどと加熱して発酵分解する。1日100回分がおおよその目安で、上限に達した場合、復活まで1日から数日間かかる。
 各山小屋は利用量が多いとき、水分を含んだおがくずをくみ取って乾燥させ、分解処理が落ち着いてから処理槽に戻す作業をしていた。池田館は、コロナ禍で短期雇用を好む人が減り、利用客に見合う数の従業員が確保できていないという。池田代表は「くみ取りが追い付かないと、処理効率が格段に落ちる。この事態だけは避けたい」とこぼす。
 富士登山公式サイトには山小屋のトイレに制限がかかると周知する文章が載り、携帯トイレの持参を求めている。しかし、山中についたてはなく、他人の視界から外れることは困難。登山者たちは「ふん尿を背負って歩くなんて考えられない」と嫌悪感を示す。
 (富士宮支局・国本啓志郎)

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