「トー横」 静岡県東部から家出の10代も 夏休み 静岡県警、警戒強める

 東京・歌舞伎町の一角に「トー横」と呼ばれるエリアがある。近年、若者が薬物事件や犯罪に巻き込まれるなど社会問題化する中、静岡県東部の子どもが家出して訪れたり、防犯ボランティア団体に保護されたりするケースが出ている。学校が夏休みに入り、静岡県警などは地理的な近さから安易に「トー横」を目指して集まらないよう呼びかけている。

若者が地べたに座ってくつろぐ様子も見られる「トー横」エリア=東京・歌舞伎町
若者が地べたに座ってくつろぐ様子も見られる「トー横」エリア=東京・歌舞伎町


 「SNSを見て境遇が近い子の存在を知り、トー横に集まるようだ」。歌舞伎町で活動する防犯ボランティア団体「オウルxyz(オウリーズ)」代表の男性は言う。男性は警察や行政と連携し、同町の若者の食事支援や家族の悩み相談、家出人捜索の支援などに取り組む。近年、若者が都内近郊だけでなく、本県など全国から来ていることに注視しているという。
 男性によると、本県から訪れた若者をこれまでに3人確認。県東部から家出した10代前半の子を保護したこともあった。男性は「コロナ禍で地域コミュニティーが崩れ、若者にとってスマートフォンが世界の中心になった。TikTokなどSNSの影響は大きい」と分析する。

 ■都会への憧れで
 県東部の在住者が歌舞伎町を舞台に犯罪に加担していたことも判明した。7月中旬、同町で大麻を所持したとして大麻取締法違反の罪に問われた男の判決公判が東京地裁であった。男は長泉町竹原の無職内山直樹被告(39)。東京地裁は懲役6月、執行猶予3年を言い渡した。起訴状などによると2月21日午前、乾燥大麻0・332グラムを所持していた。
 「内山被告は大麻所持にとどまらず、トー横で若者に大麻を配っていた」と男性は証言する。内山被告は高速バスを使って上京し、2年ほど前から歌舞伎町で路上生活を始めたという。本名を隠して「GOD」と自称し、男性は「居場所のない若者を集めて大麻を配るなどして、トー横の薬物汚染の一端を担っていた」と告発する。
 この団体に保護された県東部の子の保護者によると、子どもはスマートフォンで行き方を調べ、電車で新宿駅に向かった。保護者は「親に迷惑をかけたくない、都会への憧れなどが理由でトー横に向かったようだ。トラブルに巻き込まれるリスクは『普通の子』にもある」と警告した。

 ■地方から集まる
 同町の新宿東宝ビル周辺の広場でたむろする若者の集団が「トー横キッズ」と呼ばれ始めたのは、2010年代後半ごろから。だがトラブルを懸念する関係者からは「『トー横』と呼ぶべきではない」との声も上がる。
 団体代表の男性によると、集まった若者の多くは2~3カ月の間に何らかのトラブルに遭い、去って行くという。「トー横が報道され始めてから、地方から集まる若者が増えた。家庭や学校に居場所がない若者の受け皿が地域にないことが問題」と指摘する。同団体に保護された県東部の子の保護者は「若者にとってかっこよく見える呼称も良くないのでは。危険な場所と認識させられる表現が必要」と捉える。
 県警人身安全少年課によると、SNSを介して犯罪に巻き込まれるケースは低年齢化が進み、「間違った情報を信じやすい」と警戒を強める。首都圏で県内児童が被害に遭うケースは昨年から一定数確認され、小中学生も含まれる。「小学生もスマホを持つ時代。学校や携帯会社、保護者、地域が連携し、早い年齢からの啓発活動が大切」と強調した。
 (東部総局・菊地真生)

 

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