古布で「人の不在」表現 浜松で美術家婦木さん個展 27日まで

 浜松市中区の市鴨江アートセンターで、神戸市出身の美術家婦木加奈子さん(26)の個展「いなさ」が開かれている。同センターのアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)事業の一環。役目を終えた古布を素材にした造形を組み合わせ、「人の死」や「不在」について考察するインスタレーションを提示した。展覧会は27日まで。

古布で制作した祭壇を中心に遠州地方の「盆義理」のしつらえを作品化した婦木さん=浜松市中区の市鴨江アートセンター
古布で制作した祭壇を中心に遠州地方の「盆義理」のしつらえを作品化した婦木さん=浜松市中区の市鴨江アートセンター

 婦木さんは5月、浜松市に移住。直後に別の場所に住む親しい人の死に直面し、「死に向き合うこと」「死によって残るもの」を作品の主題に決めた。「不在の存在」を意味する造語「いなさ」という言葉をよりどころに創作を進めた。
 現在は使用されていない衣類、布団、座布団などを活用し「かつて誰かが使っていた痕跡」を生かしながらいくつもの“縫い物の彫刻”を制作。会場には遠州地方の風習「盆義理」のしつらえを布で再現した作品など、死と再生を内包した8点が並ぶ。婦木さんは「浜松で過ごした時間、その間に自分に起こった出来事がそのまま作品になっている」と、滞在制作の道筋を振り返った。
 26日午後6時から会場でアーティストトークを実施する。詳細は同センターの公式サイトを参照。
 (教育文化部・橋爪充)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞