映像分析 災害の現場特定 「キャメラを持った男たち-関東大震災を撮る-」 都市史・災害史研究家 田中傑さん(静岡駿河区)

 1923年9月1日の関東大震災から100年を迎えるのを前に、震災直後の現地を撮影したカメラマン3人とその映像フィルムに着目したドキュメンタリー映画「キャメラを持った男たち -関東大震災を撮る-」が8月26日、全国で公開される。過去に例がないこのプロジェクトでは、静岡市駿河区の都市史・災害史研究家の田中傑さん(49)が、映像の撮影日時や場所の特定に大きく貢献した。

「キャメラを持った男たち」の一場面。1923年9月2日、鶯谷駅から上野駅方向を見る
「キャメラを持った男たち」の一場面。1923年9月2日、鶯谷駅から上野駅方向を見る
「このフィルムを撮っている場所を知りたいという強い気持ちがあった」と語る田中傑さん
「このフィルムを撮っている場所を知りたいという強い気持ちがあった」と語る田中傑さん
「キャメラを持った男たち」の一場面。1923年9月2日、鶯谷駅から上野駅方向を見る
「このフィルムを撮っている場所を知りたいという強い気持ちがあった」と語る田中傑さん

 映画は一般社団法人「記録映画保存センター」(東京)が製作。関東大震災を記録した二十数本のフィルムから、日活向島撮影所の撮影技師だった高坂利光さん、「東京シネマ商会」所属の白井茂さん、映画会社「岩岡商会」経営の岩岡巽さんの3人が撮影した映像を中心に構成した。
 フィルムは未曽有の大災害後の混乱を捉えた貴重なものだったが、いつ、どこで撮影したかの記録がない。そこで白羽の矢が立ったのが、東京理科大、京都大などで2013年から火災科学の研究の素材として関東大震災の映像を活用していた田中さんだった。
 「映像に写っているものを繰り返し見る。道路は舗装されているか。街並みは商店街か、民家か。建物に会社名や医院の名前が判別できる看板が見えた場合は、当時の電話番号帳を調べて場所を割り出した」
 一部不鮮明な映像に目を凝らした。電信柱の住所や電柱広告は見逃さない。電話ボックスの設置場所は公的に記録されているので、写っていれば手がかりになる。路面電車の軌道も場所の特定に大きく寄与したという。
 「人や建物の影で、太陽の位置が推定できる。そうすれば、時刻も分かる」
 映画の製作を担当した記録映画保存センターの村山英世事務局長は田中さんを「この映画のキーマン。震災キャメラマンの映像にリアリティーと想像力を与え、関東大震災を現代によみがえらせた研究者」とたたえた。
 (教育文化部・橋爪充)

 映画は8月26日からポレポレ東中野(東京都中野区)、横浜シネマリン(横浜市中区)、大阪第七芸術劇場(大阪市淀川区)などで上映。静岡県内は未定。横浜シネマリンでは26日午前9時45分からの上映の後、田中傑さんが「100年前の災害を追体験する」と題して講演する。問い合わせは同館<電045(341)3180>へ。

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