子どもの権利、柔らかな絵で 絵本作家えがしらみちこさん(三島)「意見表明する大切さ伝えたい」

 三島市在住の絵本作家えがしらみちこさんが絵を担当した絵本「ようこそ こどものけんりのほん」が、白泉社から出版された。4月には子どもの権利に関する法律「こども基本法」が施行されたばかり。えがしらさんは「子どもの権利を身近に感じてもらえるよう心がけて絵を描いた。子どもたちに、自分の気持ちや意見を表現する大切さを伝えたい」と思いを語る。

絵本への思いを語るえがしらみちこさん。30日まで原画展が開かれている=三島市の「えほんやさん」
絵本への思いを語るえがしらみちこさん。30日まで原画展が開かれている=三島市の「えほんやさん」
「ようこそ こどものけんりのほん」
「ようこそ こどものけんりのほん」
絵本への思いを語るえがしらみちこさん。30日まで原画展が開かれている=三島市の「えほんやさん」
「ようこそ こどものけんりのほん」


 制作のきっかけは、子どもの権利の視点を広めるために活動する「子どもの権利・きもちプロジェクト」代表で仏教大社会福祉学部准教授の長瀬正子さんが手がけた別の絵本の原画展を昨年、えがしらさんが営む絵本専門店「えほんやさん」(同市中央町)で開いたのが縁となった。
 「ようこそ-」はえがしらさんが絵を、同プロジェクトが文を担当した。世界の国々が参加し、こども基本法のベースになっている「子どもの権利条約」を、子どもたちの生活の場面に落とし込み、柔らかなタッチの絵で紹介している。「あなたはいつだって こころもからだも あんしんしてくらせる」「いうことをきかないからと ひどいことをいわれたり おどされたりしないよ」といった易しい文章で、小さな子どもが理解できる内容になっている。
 特に強調するのは、子どもは自分の意見を自由に表明でき、尊重されるという権利。コロナ下には一斉休校や学校行事の中止、公園の閉鎖など、子どもたちの意見が聞き入れられない場面が多くあった。えがしらさんは「絵本の制作に携わりながら、自分自身も子どもたちの声に耳を傾けていたか、振り返る機会になった」と話す。
 一方、長瀬さんによると、子育て中の親の一部からは子どもの権利に対して「これ以上、子どもがわがままになったら困る」など、ネガティブな反応もあるという。長瀬さんは「子育てに負担を感じている親が多いことの表れ」とみる。その上で「子どもの権利は本来、子どもの育ちが保障されるよう国が環境を整える努力をするべき、という内容。親の『やることリスト』を増やそうということではない」と強調する。
 親の思いも踏まえ、絵本には親子が冷静に話し合うためのヒントも盛り込んだ。自転車に乗ったり絵を描いたりしながら話をする、縫いぐるみと一緒に話す-などの手法を提案する。長瀬さんは「全てを子どもの希望通りにするということではない。互いに尊重し、話し合う過程を大切にしてほしい」と呼びかける。
 絵本カバーの裏側は、子ども権利条約の条文を紹介するオリジナルポスターになっている。えほんやさんでは30日まで、絵本の原画展が開かれている。
 (生活報道部・大滝麻衣)

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