生活報道部 大滝麻衣
おおたき・まい 1984年、静岡市清水区生まれ。静岡新聞社生活報道部記者。2006年に入社し、浜松総局、磐田支局、社会部、東部総局などでの勤務を経て現職。大学時代は臨床心理学を専攻。子どもの貧困、児童虐待、発達障害などに関心を持ち、継続的な取材テーマにしています。趣味はオンラインライブ鑑賞。
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未手術の性別変更、静岡家裁認める 静岡市の安池さん「最初の一歩」
生殖機能をなくす性別適合手術をせずに戸籍上の性別変更を申し立てた静岡市駿河区の会社社長安池中也さん(54)の家事審判で、静岡家裁は22日までに、安池さんの性別を女性から男性に変更することを認めた。決定は18日付。 安池さんは幼少期から女性として扱われることに違和感を覚え、31歳の時に性同一性障害と診断された。その後、ホルモン治療を受け、名前を変更。性別適合手術はせず、男性として社会生活を送る。最高裁や静岡家裁浜松支部が昨年10月、性別変更の際に生殖機能をなくす手術を求める性同一性障害特例法の規定を、違憲で無効と判断する決定を出したことを受け、今年2月に性別変更を申し立てていた。 安池さん
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3D模型触って建物の形“観察” 「学びの世界広がれば」 静岡市で視覚障害者向け体験会
静岡県視覚障害者情報支援センター(土居由知センター長)は16日、3D模型を手で触って観察する「触察(しょくさつ)」の体験会を静岡市葵区の県総合社会福祉会館で開いた。視覚障害者ら約20人が参加し、県内の建築物の3D模型を触って形や構造などを確認した。 視覚障害者の情報保障を研究する鶴見大(横浜市)の元木章博教授が講師を務めた。元木教授は「3Dプリンターが普及したことで、視覚障害者の個人的な『知りたい』という要望に応えられるようになってきた」と説明。当事者からは「自分の職場や自宅がどんな形か知りたい」といったニーズがあるという。 この日は、手のひらサイズの同会館とグランシップの3D模型を配布
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男女平等指数経済分野 静岡県42位 国保祥子准教授(県立大経営情報学部)に聞く【国際女性デー2024】
8日の国際女性デーに合わせ公表された2024年の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」で、静岡県の経済分野の順位は42位だった。22年は45位、23年は全国最下位の47位と、3年連続で40位台に低迷する。ジェンダー平等に経営戦略として取り組む県内企業を連載「しずおか企業探訪 経営とD&I」で紹介する県立大経営情報学部の国保祥子准教授に、本県の課題を聞いた。 -順位や各指標を見た感想は。 「全体の結果から、各都道府県で、女性の地位や社会的役割がどう捉えられているかが透けて見える。静岡県の結果は、学生や若年女性が果たしてここで働きたいと思えるのかと危機感を抱く内容だ。首都圏の大企業では既に
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女性だけでなく、男性も生きづらさを感じています 「男だから」にストレス 静岡新聞社アンケート【NEXT特捜隊】
近年、ジェンダー(社会的性差)平等への意識が高まったことで、「男性の生きづらさ」にも目が向けられている。静岡新聞社のNEXT特捜隊に「女性だけでなく、男性の生きづらさについても取り上げてほしい」との投稿があり、ウェブアンケートを実施した。長時間労働と家事・育児の両立に悩む声や、学校に男子更衣室がないことへの不満などが寄せられた。(生活報道部・大滝麻衣) 【▶静岡新聞社NEXT特捜隊 LINE友達になる】 2~5日に行ったアンケートには、静岡県内を中心に13~80歳の計66人が回答した。職場や家庭、学校で「男性だから」という固定観念を理由とした生きづらさや悩み、ストレスが「よくあ
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記者コラム「清流」 子の「つぶやきことば」
静岡なかはら幼稚園(静岡市駿河区)は50年もの間、園児が生活の中で発する「つぶやきことば」を保護者と一緒に“採集”している。普段は家庭や園でノートに書き留め、年1回、職員が文集を編集する。 「あぁ もう くたびれちゃった」(3歳11カ月、夕食を食べながら)、「ねるってまほうだね」(4歳9カ月、朝起きたら傷が痛くなくなっていて)―。文集には言葉とその時の状況、年齢が記録され、子ども自身や家族にとって宝物になっているに違いない。 「正直、書き留めるのは結構大変」と保護者の一人は言う。だからこそ「独自にやろうと思っても、きっと続かないので、園に感謝している」そうだ。私自
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能登杜氏追うドキュメンタリー 2月3日、静岡市でチャリティー上映
石川県能登半島の能登杜氏(とうじ)を追ったドキュメンタリー映画「一献の系譜」(石井かほり監督)のチャリティー上映会が2月3日、静岡市葵区七間町のMIRAIEリアンで開かれる。 能登半島地震を受けて上映会を企画したのは、日本酒セレクト販売「富士の酒」(掛川市)代表の榛葉冴子さん。土井酒造場(同市)杜氏で、夫の農さんがかつて能登杜氏組合に所属していた縁などから「被災地の力になりたい」と考えたという。石井監督が被災地支援のため、全国でのチャリティー上映を呼びかけていたことから、静岡市での開催を決めた。 上映は午後2時から(開場同1時半)。参加費は2500円で、能登杜氏が仕込んだ日本酒1杯が付く
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コーヒー1杯で地域と人つなぐ カフェ×交流会/ラテアートの魅力発信【NEXTラボ】
家族や友人とのくつろぎの時、あるいは仕事や勉強のお供として、多くの人に親しまれるコーヒー。その魅力や楽しみ方を伝えながら、地域活性化や交流の場づくりに取り組むバリスタたちがいる。コーヒー1杯に込める夢や思いとは。 不登校経験生かし、交流の場つくる(山本紘彰さん) 「コーヒーをきっかけに、人と人をつないでいきたい」と話す山本紘彰さん=静岡市葵区 「コーヒー1杯で大学並みの学びを提供する場を目指す『cafe(カフェ)ユニ場』です」―。2023年12月、静岡市葵区鷹匠のカフェで開かれた交流会。主催者のバリスタ山本紘彰さん(22)=同市清水区=は、集まった老若男女約20人の前で会の趣旨を
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ふるさとの香り、癒やしに 静岡の元教員、杉浦さん 地元産かんきつで精油開発
元小学校教諭で、退職後に調香師やアロマセラピストとして活動する静岡市清水区の杉浦元昭さん(61)が、地元特産のかんきつ類を原料にした精油とアロマスプレーを開発した。天候の影響などで出荷できない果実を生産者に提供してもらい、活用した。杉浦さんは「ふるさと静岡の良さや懐かしさを香りから感じてほしい」と強調する。 開発したのは静岡市特産の太田ポンカン、はるみ、甘夏の3種の精油とアロマスプレー。3種を含め、河津町産のニューサマーオレンジなど計12種の精油をブレンドしたアロマスプレー「静岡の香り 駿河」も製造した。リラックス効果や安眠作用が期待できるという。精油の抽出は徳島県の企業が行い、ブレンドや
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「タケノコ王」風岡さん、地元富士宮市にツリーハウス 直売所閉店は24年夏に前倒し
「タケノコ王」として親しまれる富士宮市の風岡直宏さん(50)が、同市内房の民有地に作ったツリーハウスが完成した。9日の完成披露式典では、地域活性化に向けて思い付いたというツリーハウスを「子どもたちの写生大会の題材などとして活用してほしい」と話し、経営するタケノコ直売所の閉店については当初の2025年から今夏に前倒しすると説明した。 ツリーハウスは杉とヒノキの木計4本に固定され、床は地上から3・5メートルの高さにある。室内の広さは4・5畳ほどで、窓からは周辺の山々の景色を楽しめる。テレビ番組の企画として昨年5月から半年間かけて制作。風岡さんのデザイン画に基づき、ツリーハウスを各地で建てる大工
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園児のつぶやき集め半世紀「ねるってまほうだね」「くたびれちゃった」 静岡なかはら幼稚園 保護者「文集は宝物」
静岡市駿河区の認定こども園「静岡なかはら幼稚園」(浅場美千代園長)が、日々の生活の中で子どもたちが発する「つぶやきことば」を保護者とともに“採集”し続け、半世紀が経過した。年1回編集する文集「こころのめ」は第50集を数える。記録された言葉の数々は「保育や子育てをする上で大切な手がかり」(浅場園長)であり、保護者にとっても「かけがえのない宝物」になっている。 「おもしろいことは いいことなんだよ」―。第50集のタイトルになったこの言葉は、4歳11カ月(当時)の女児のつぶやき。お笑い芸人のまねをする女児に母親が「何でまねしているの」と尋ねると、こう答え、「みんながたの
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「おくるみ」シルクで優しく 細菌の繁殖抑え、速乾 菊川の通販会社考案 助産院も活用
生まれたばかりの赤ちゃんを包み、抱っこや寝かしつけに役立つ「おくるみ」。菊川市を拠点に着物の通販事業を手がける「ブライトネス」(長谷川和代代表)が、シルク素材を生かしたおくるみを考案した。子育て中の社員の声から誕生した商品で、長谷川さんは「赤ちゃんの肌トラブルや寝かしつけに悩むママたちをサポートできれば」と語る。 長谷川さんによると着物の代表的な素材でもある天然繊維のシルクは、細菌の繁殖を抑えて肌を清潔に保ち、速乾性にも優れている。おくるみはニットの製法で編まれているため、伸び縮みしやすく、赤ちゃんを優しく包める。洗濯機の使用も可能で手入れが簡単という。 開発のきっかけは、新型コロナウ
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「リトルベビー」子育て課題共有 静岡でセミナー、当事者が支援訴え
早産などにより小さく生まれた低出生体重児や家族が抱える課題について考える「次世代を守る! 赤ちゃんの今と未来の健康セミナー」(日本家族計画協会など主催)が3日、「世界早産児デー」(17日)に合わせて静岡市駿河区で開かれた。本県は小さく生まれた赤ちゃんのための母子手帳「リトルベビーハンドブック」が全国に広がるきっかけをつくった“先進地”。全国から当事者サークルの代表者や医療、母子保健関係者など約100人が集い、交流を深めた。 「人の励ましもつらく、情報もない。真っ暗闇に突き落とされた感覚だった」。2006年に第2子を452グラムで出産した登山万佐子さん(53)=福岡
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記者コラム「清流」 自分に優しい目 向けて
この夏、静岡市内の結婚式場で乳がんの治療を経験した人にウエディングドレスを着てもらうイベントがあり、20代の助産師の女性に出会った。ヘアメークの間、闘病の体験を聞かせてもらった。 治療が一段落した後の落ち込みが一番激しかったこと、大学院の休学を経て助産師になる夢をかなえたこと、「恋愛はもう無理」と思っていたが、最近、結婚したこと―。芯の強さと明るい人柄に引かれたこともあり、再度、取材をお願いし、「ピンクリボン月間」(10月)に合わせた特集記事を書いた。 「自分に優しい目を向けてほしいと伝えたい」と女性。自分の体や心に関心を持ち、変化に敏感になることが、病気の早期発見にもつながる。「自分を
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声の大きさやテンポを工夫 子どもの読みたい気持ち優先 読み聞かせのこつ 絵本作家・朗読家の北島さんに聞く
親子のふれ合いの時間として大切にしている人も多い絵本の読み聞かせ。ただ、「忙しくて読むのが大変」「上手に読んであげられない」など、悩みを抱える人もいるのでは。「1秒で子どもたちの反応が変わる!! また読んで欲しくなる読み聞かせ」の著書があり、絵本作家で朗読家の北島多江子さん(51)=浜松市西区=に、読み聞かせの時間をより楽しく豊かにするためのこつを聞いた。(生活報道部・大滝麻衣) ―北島さんが考える読み聞かせの魅力とは。 「親子で、お話の世界を一緒に旅することができるところです。冒険の中でワクワクしたりドキドキしたりして絵本を閉じた後、現実世界は変わらなくても、子どもの気持ちには変化が
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静岡人インタビュー「この人」 新たな働き方、学び方を発信する 池田僚介さん(富士市)
「人生100年時代」と言われる中で、富士市を拠点に新たな働き方、学び方、生き方について発信する合同会社「未来志向Labo(ラボ)」の代表。地域交流スペース「ふじくらす@瓜島町」も運営する。42歳、静岡市清水区出身。 ―未来志向Laboが取り組むことは。 「性別や年齢、家庭の事情など問わず、挑戦するきっかけと場を提供し、新たなキャリアを創造するサポートをしている。例えば、子育て世代のリスキリング(学び直し)支援や、スキルを身につけた人がリモートで働ける場の開拓など。都内のスタートアップ(新興企業)を支援して収益を上げながら、多様な視点や新たな仕事の形態を生み出すヒントを得ている」 ―ふじ
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全国介護技能コンテストで優秀賞 白扇閣(清水区)の望月さん
全国の介護従事者が食事や入浴介助などの技能を競う「オールジャパンケアコンテスト」で、静岡市清水区の特別養護老人ホーム「白扇閣」職員の望月早苗さん(45)が食事部門(経験5年未満)でトップの優秀賞を受賞した。 コンテストは東京都内で15日に開かれた。望月さんが出場した部門には7人が出場。訪問介護員として、右半身にまひがある高齢者役を相手に、食事介助をする実技を7分の持ち時間で披露した。望月さんは「会話を大事にしながら、本人ができそうな動作に関しては自立を促す介護を心がけた」と振り返った。 望月さんは歯科衛生士や接客の仕事を経て2019年1月に入職、現在はデイサービスを担当する。「コンテスト
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#ピンクリボン月間 自分の体、知って守って【NEXTラボ】
日本人女性の9人に1人が発症するとされる乳がん。40代後半から急激に罹患[りかん]率が高まるが、20代や30代でかかるケースもある。10月は乳がんの早期発見・治療を呼びかける「ピンクリボン月間」。若年性乳がんを経験した県内の女性の話から、いま一度、自身の健康に目を向けたい。 20代でも乳がんに 浜松の青木朱那さん 浜松市北区の青木朱那[あやな]さん(29)は、助産師を目指して大学院に通っていた23歳の時、両胸に乳がんの診断を受けた。最初に異変を感じたのは19歳の頃。ブラジャーの右側に小さなほくろ程度の血がつくことが時々、あった。二つの病院を受診し、エコー検査や触診を受けたがしこりなど異
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台風で被災のビオトープにアサギマダラ 静岡の松野小 復旧に住民ら協力、児童喜び
昨秋の台風15号で浸水被害に遭った静岡市葵区の松野小(石原鉄也校長)のビオトープに、「旅するチョウ」として知られるアサギマダラが飛来している。静岡県内外のボランティアの協力で復旧後、アサギマダラが好むフジバカマの苗を地域住民からの提供で植栽した。児童や教職員は「多くの人のおかげで、アサギマダラが来てくれた」と喜んでいる。 3、4年生の14人は17日、総合的な学習の時間を活用し、ビオトープに飛来したチョウを観察した。フジバカマの先に止まった華麗な姿に「かわいい」と声を弾ませた。4年の松永空奈さん(9)は「来てくれてうれしい。地域の人たちに感謝したい」と話した。 同校のビオトープは昨年、台風
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宇宙食目指しミカンゼリー開発 増田さん(静大付属静岡中1)ら CF募る
静岡大付属静岡中1年の増田結桜[ゆら]さん(12)=静岡市清水区=と県内の大学生らでつくる「チームゆら」が、県産食材を生かした宇宙食として、ミカンゼリーを開発するプロジェクトを本格化させている。2026年度までに宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙日本食」認証取得を目指し、提出するサンプルの完成を急ぐ。開発資金をクラウドファンディング(CF)で募り、増田さんは「チームを結成して活動の幅が広がってきた。皆さんの応援で夢を実現したい」と意気込む。 「試食への協力、お願いします」。8月下旬、同区の交流拠点「コラボレーションスペースTakt」で、ミカンゼリーの試食会が開かれた。使用する甘味料が
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認知症当事者の集い「本人ミーティング」広がる 藤枝市など 体験談冊子を作成
認知症の当事者が集い、自らの体験や悩み、生活上の工夫などを話し合う「本人ミーティング」が県内でも広がりつつある。交流の場としてだけでなく、行政の認知症施策や地域づくりに当事者の視点や意見を反映させる取り組みとしても注目されている。 「道に迷う時、自分では迷っているという感覚はないんです」「そう、自分も正しい道を進んでいる感覚です」-。藤枝市が6月に開いた本人ミーティング。認知症当事者が体験を語り合った。参加したのは60~80代の当事者4人と行政、福祉関係者。道に迷った経験や服薬の工夫、スマホの活用法など、話題は多岐にわたった。 同市は2020年度から月1回、市内の古民家カフェを会場にミ