未手術の性別変更、静岡家裁認める 静岡市の安池さん「最初の一歩」

 生殖機能をなくす性別適合手術をせずに戸籍上の性別変更を申し立てた静岡市駿河区の会社社長安池中也さん(54)の家事審判で、静岡家裁は22日までに、安池さんの性別を女性から男性に変更することを認めた。決定は18日付。

「講演を通して理解を広げたい」と語る安池中也さん=22日午後、静岡市内
「講演を通して理解を広げたい」と語る安池中也さん=22日午後、静岡市内

 安池さんは幼少期から女性として扱われることに違和感を覚え、31歳の時に性同一性障害と診断された。その後、ホルモン治療を受け、名前を変更。性別適合手術はせず、男性として社会生活を送る。最高裁や静岡家裁浜松支部が昨年10月、性別変更の際に生殖機能をなくす手術を求める性同一性障害特例法の規定を、違憲で無効と判断する決定を出したことを受け、今年2月に性別変更を申し立てていた。
 安池さんは決定について「戸籍の性別変更は、自分にとっては最初の一歩。今後、住民票や保険証の変更手続きを進める。将来的には性別適合手術を受けたいと思っている」と話した。
 (生活報道部・大滝麻衣)

誹謗中傷「存在否定されるのはつらい」
 静岡家裁で性別変更の申し立てが認められた安池さんは22日、「男性と認められ、安心した」と心境を語った。一方、家裁への申し立てが報道されて以降、自身を誹謗(ひぼう)中傷するメールなどが数多く寄せられていると明かし、「講演の機会などを通して理解を広げていければ」と決意を新たにした。
 安池さんの元には、性別適合手術を受けずに性別変更を申し立てたことに関し、「覚悟がない」「気持ち悪い」「公共のトイレや風呂の使用が怖い」といったメールや投稿があったという。安池さんは「自分の存在が否定されるのはつらい」と心を痛めている。
 2019年から県内外の学校などで性的マイノリティーとしての経験を語る講演会を続ける。本年度も中学生や行政職員向けなど計15回を予定し、「誰ひとり取り残されない社会をつくるためにどうしていけばいいか、一緒に考えていきたい」と話した。

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