声の大きさやテンポを工夫 子どもの読みたい気持ち優先 読み聞かせのこつ 絵本作家・朗読家の北島さんに聞く

 親子のふれ合いの時間として大切にしている人も多い絵本の読み聞かせ。ただ、「忙しくて読むのが大変」「上手に読んであげられない」など、悩みを抱える人もいるのでは。「1秒で子どもたちの反応が変わる!! また読んで欲しくなる読み聞かせ」の著書があり、絵本作家で朗読家の北島多江子さん(51)=浜松市西区=に、読み聞かせの時間をより楽しく豊かにするためのこつを聞いた。(生活報道部・大滝麻衣)

読み聞かせの時間を豊かにするためのこつを伝える北島多江子さん=浜松市中区の谷島屋浜松本店
読み聞かせの時間を豊かにするためのこつを伝える北島多江子さん=浜松市中区の谷島屋浜松本店
「1秒で子どもたちの反応が変わる!! また読んで欲しくなる読み聞かせ」
「1秒で子どもたちの反応が変わる!! また読んで欲しくなる読み聞かせ」
読み聞かせの時間を豊かにするためのこつを伝える北島多江子さん=浜松市中区の谷島屋浜松本店
「1秒で子どもたちの反応が変わる!! また読んで欲しくなる読み聞かせ」


 ―北島さんが考える読み聞かせの魅力とは。
 「親子で、お話の世界を一緒に旅することができるところです。冒険の中でワクワクしたりドキドキしたりして絵本を閉じた後、現実世界は変わらなくても、子どもの気持ちには変化があります。そういった体験の積み重ねが想像力を育みます。人と物を分け合ったり、自分の身を危険から守ったりできるのも想像力があるからこそです。読み聞かせは『生きる力』の土台になると考えています」
 ―忙しい中での読み聞かせを負担に思う人もいます。
 「もちろん、私にもそういう時はありました。無理に毎日読む必要はありません。ただ、1冊読むのにかかるのは3、4分ほど。忙しい人ほど、子どもとだけ向き合える貴重な時間になると思います。しかし当時は、その数分が少し負担に感じる日もあり、小学生だった子どもが察して「読んで」と言わなくなりました。子どもに読み聞かせができる皆さんがとてもうらやましいです。限りある時間です。ぜひ、『声のぬくもり』でお子さんを包んであげてほしいと思います」
 ―子どもが喜ぶ読み方のこつはありますか。
 「最初のステップとしては、絵本の場面や登場人物に合わせて、声の大きさやテンポを変えてみることです。『伝わる読み聞かせ』にぐっと近づきます。カラオケの選曲と同じで、自分の声質が生かせる本を選んでみるのもおすすめです。自分が開く読み聞かせ講座では、抑揚についてよく聞かれます。『抑揚は、一緒に絵本を楽しむための思いやり』と答えています。抑揚をつけると、絵本の内容がよりスムーズに伝わります。ただ、雪女が出てくるような絵本では淡々と読む方が、冷たさや怖さを表現できる場合もあります」
 ―「最後まで聞いてくれない」「同じ本ばかり読みたがる」といった悩みも多いようです。
 「大人もドラマや音楽を鑑賞する時、途中で前に戻ったり、やめたり、気に入れば、繰り返し鑑賞したりしますよね。それと同じです。読み聞かせに関しての『子どもの困った行動』は自然な行動と気付くと、心が軽くなりませんか。途中で他の本を持ってきたら、その本を読んであげてください。今、読みたいという子どもの気持ちを優先できるといいですね。大人も絵本の読み聞かせは、自分の心を休める時間と考え、コーヒーを飲むような感覚でリラックスして取り組めるといいと思います」

 きたじま・たえこ 学校の読み聞かせボランティアや書店での読み聞かせ会の講師などとして、約30年活動している。2020年に第4回絵本出版賞「絵本のストーリー部門」で最優秀賞を受賞し、「大みそかに、じかんがじゃんけん大会?」を出版。今年6月、読み聞かせのメソッドを伝える「絵本プロフェッショナル協会」を設立した。

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