「タケノコ王」直売所閉店へ 富士宮の風岡さん 足の不調、売り上げ減で決断 25年春までは全力疾走

 テレビ番組などで「タケノコ王」として親しまれる風岡直宏さん(49)が営む直売所「風岡たけのこ園」(富士宮市長貫)が、2年後の2025年春のシーズンを最後に閉店する。足に不調を抱えていることに加え、長期的な事業継続が難しいことから、タケノコの生産自体をやめると決断した。風岡さんは「タケノコ農家の仕事に命を懸けてきた。最後まで最高の味を追い求め、伝説になって終わりたい」と意欲を燃やす。

「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
風岡さんが営む「風岡たけのこ園」
風岡さんが営む「風岡たけのこ園」
「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
風岡さんが営む「風岡たけのこ園」

 風岡さんは01年から実家の竹林でタケノコ生産に従事。年間300日以上を山の管理と収穫に費やす。高値がつく「白子」と呼ばれる白いタケノコの量産に成功して注目を集め、地元地域をPRするためテレビのバラエティー番組にも出演するようになった。
 「夢は、生涯現役でタケノコ農家の仕事を全うすることだった」。だが、トライアスロン選手だった時に酷使した右足の状態が悪化し、4年前に1回目の手術を経験。さらに昨年12月の検査で、近い将来、再手術が必要と医師に告げられた。手術後は足の可動域が狭くなり、「アスリート並みに足を使うタケノコ生産は難しくなった」という。
 決断に至ったもう一つの理由は「将来、長男にタケノコ農家を継いでもらえるほどの収入が、現状で確保できていないこと」。風岡さんが栽培するタケノコはミシュランの星付き料理店で採用される一方、近年は客の高齢化による需要の低迷や交通事情の変化で売り上げが減少している。「周辺の旧芝川町エリアの他のタケノコ生産者に専業はおらず、高齢化も進んでいる。地域全体が将来的に厳しい環境」と語る。
 決断までに葛藤したが、「今は、すがすがしい気持ち。ゴールが見えたからこそ、あとは全力でやるだけ」と表情は明るい。閉店の告知を始めたのは、古くからの顧客や取引先への影響を最小限にするため。「閉店後のことはまだ全く考えていない。命を懸けられる仕事に、最高の仲間たちと一緒に取り組めて幸せだった」。タケノコ王は今季を含め3シーズン。全力で走り抜けるつもりだ。

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