記者コラム「清流」 戦争の記憶、次世代に

 終戦記念日の前後に戦時下を描いた映画「火垂るの墓」がたびたび放映されていた。小学生の頃、家族そろって視聴していると、祖母から「空襲のことを思い出すから(テレビを)消してほしい」と言われたことが記憶に残っている。
 先日、空襲で同級生を亡くした男性(91)に当時の状況を聞く機会があった。「防空壕(ごう)に飛び込んだら右足に生温かいものを感じた。触ったら肉片だった」。悲惨な情景をどう表現すればよいのか。戦争体験者の読者につらい経験を思い出させてしまうのではと考えて筆が止まった。
 体験世代の高齢化が進む中、戦争の記憶を次世代に継承していくことが社会全体として欠かせない。そう考えると、包み隠さず書くべきだった。悲劇を繰り返さないとの思いで、事実を伝える使命を果たしたい。
 (磐田支局・崎山美穂)

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