世界体操(9月30日開幕)初代表 22歳三輪哲平、雌伏の美技 世界に立つ【しずスポ】

 「天才」-。体操男子の三輪哲平(セントラルスポーツ、城南静岡中出)は、自身を評する声を苦々しく思ってきた。決まって「でも、代表になれていない」と続くからだ。だが、ようやく真価を示す舞台に立つ。30日開幕の世界選手権(ベルギー)で初の日の丸を背負うオールラウンダーは「リオ五輪の日本代表は、前年の世界体操制覇を団体金につなげた。ここでの優勝がパリの金への近道」と頂点しか見ていない。 故障越え ようやく真価の舞台

 大阪・清風高3年夏に全国高校総体3冠。順大の1年後輩で、五輪王者の橋本大輝が「ポテンシャルは計り知れない」と一目置く逸材は大学時代、度重なる故障に苦しんだ。
 「自主性が問われる中でどこまで追い込むべきか、行き当たりばったりになった」。自身の体との向き合い方に悩み、練習を積みきれない不安が勝負どころの弱さにつながる。東京五輪代表選考は団体枠に望みをつないで臨んだ最終戦で予選落ち。ただ、苦悩の4年間で積み上げたものは確かにあった。
 大学3年の2021年初夏。三輪は競技人生で最も苦しい時期を過ごした。東京五輪の補欠として2カ月間、代表合宿に帯同した。可能性があれば前を向けるが、当時は腰痛を抱え「自分が出ることは絶対になかった」。それでも、チームの士気は下げられない。「本音は一刻も早く家に帰りたかった。でも、最後まで代表4人をサポートし、本番で応援する経験があって精神的に強くなれた」  王者の橋本に「勝てるのは自分しかいない」 photo01
 春に大学を卒業して迎えた今季。4月の全日本選手権は予選トップから翌日の決勝で崩れたが、5月のNHK杯で3位を死守し初代表をつかんだ。これまでと違う勝負強さを示し、「4年間で土台を作り直し、自信をもって試合に臨めている」と成長を実感する。
 技の難度こそ突出していないが、水鳥寿思・日本体操協会男子強化本部長(静岡市出身)が「Eスコア(実施点)は世界でも評価される」という正確さと美しさを追求した演技は、長身でダイナミックな橋本と一線を画す。「(橋本に)勝てるのは自分しかいない。勝つことが、そのまま世界一につながる」。遅咲きの22歳が大舞台に臨む。
 (山本一真)

 みわ・てっぺい 2000年12月21日、静岡市清水区出身。4歳で清水ペガサス体操クラブで体操を始めた。城南静岡中から大阪・清風高に進み、3年夏の18年には地元開催の全国総体で団体、個人総合、種目別平行棒の3冠。同年秋にはシニアの個人総合に初参戦し2位になった。順大を経て今春セントラルスポーツ入社。22歳。
 

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