広島で被爆の笹森さん 障害者と心通わす交流「命が何より大切」 静岡の施設訪問

 広島で13歳のときに被爆した米ロサンゼルス在住の笹森恵子[しげこ]さん(91)が14、15の両日、静岡市葵区のNPO法人「やまっこの家」が運営する区内の障害者支援施設を訪れ、利用者らと交流した。笹森さんは利用者らに被爆や米国で受けた皮膚の手術などの経験を語り、「人間の命は何よりも大切。戦争は絶対にいけない」と強く訴えた。

利用者や職員と栗拾いを体験する笹森さん(左)=静岡市葵区黒俣
利用者や職員と栗拾いを体験する笹森さん(左)=静岡市葵区黒俣

 笹森さんは1945年8月6日、解体された建物の後片付けをしようとしたとき、上空に飛行機を見つけた。指をさした瞬間、爆風に押し倒されたところまでは覚えているという。上半身にひどいやけどを負い、両親と再会できた4日後まで飲まず食わずだった。
 被爆から10年後の1955年、笹森さんは米国のジャーナリスト、ノーマン・カズンズが中心となった被爆女性を支援する事業の一環で治療を受けるために渡米した。カズンズの養女になる決断をし、10回以上の手術と結婚、出産を米国で経験した。笹森さんは戦争について「人間には知恵も心もあるのでもっと賢くなり、相手を思いやることが大事。戦いをするだけでは動物と同じ」と非難。米国に対しては「恨んでいない。全ては戦争が悪く、恨んでいては私自身がハッピーにならない」と語った。
 同NPO法人の森下純絵理事長と親交があり、訪問した。同区黒俣の作業所では利用者や職員と一緒に栗拾いを体験し、昼食で栗ご飯を堪能した。森下理事長は「笹森さんは純粋。障害者の気持ちも分かってくれて、心が通じ合っているように感じた」と感謝した。
 (社会部・小沢佑太郎)

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