権力の横暴忘れない 「甘粕事件」100年、大杉栄ら遺志つなぐ 静岡で最後の墓前祭

 関東大震災直後の混乱下で無政府主義者の大杉栄らが憲兵隊に虐殺された「甘粕事件」から100年を迎えた16日、大杉らの眠る静岡市葵区の沓谷霊園で墓前祭(同実行委員会と県近代史研究会主催)が開催された。同霊園での有志による墓前祭は没後100年を節目に最後となる。遺族や研究者、ファン、地元住民ら約50人が参列し、大杉らから受け継ぐ遺志を確かめ合った。

大杉栄らの墓前に手を合わせるおいの大杉豊さん=16日午後、静岡市葵区の沓谷霊園
大杉栄らの墓前に手を合わせるおいの大杉豊さん=16日午後、静岡市葵区の沓谷霊園
大杉栄の墓前で思いを語るおいの大杉豊さん=16日午前、静岡市葵区の沓谷霊園
大杉栄の墓前で思いを語るおいの大杉豊さん=16日午前、静岡市葵区の沓谷霊園
大杉栄らの墓前に手を合わせるおいの大杉豊さん=16日午後、静岡市葵区の沓谷霊園
大杉栄の墓前で思いを語るおいの大杉豊さん=16日午前、静岡市葵区の沓谷霊園

 同霊園の墓には大杉とともに甘粕正彦大尉ら憲兵隊に虐殺された内縁の妻で女性解放運動家の伊藤野枝、当時6歳だったおいの橘宗一が眠る。参列者は一人一人墓前に赤や黄色のバラを手向けた。大杉のおい大杉豊さん(84)=千葉県=は「墓前祭は権力の横暴や大杉と野枝の志を忘れないぞという意志の表明。大勢に囲まれて大杉は喜んでいると思う。その遺志は今も生きている」と力を込めた。
 初めて墓前祭に参加したという親族の大学院生の女性(24)=東京都=は「この100年、大杉の多面的な魅力を多くの人がいろんなアプローチで伝えてきてくれたと感じる。子孫の一人として大杉の思いをつなぎたい」と話した。
 墓前祭は遺族の高齢化から没後80年で一時途絶えたが、県近代史研究会の小池善之さん(浜松市東区)が中心となって実行委をつくり再開。2013年から没後100年を目指して毎年続けてきた。今年で最後となるが、小池さんは「来年も僕はここに来てお参りする」と参列者に語った。
 墓前祭後、静岡市葵区の静岡労政会館で豊さんによる追悼講演会も開かれた。
 (社会部・吉田史弥)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞