土砂に埋まるワサビ田 見えぬ復興 静岡・清水区河内地区 台風15号被災から1年

 静岡県内に大きな被害をもたらした台風15号の襲来から23日で1年。静岡市清水区唯一のワサビ産地・河内地区ではいまだ土砂に埋まるワサビ田は多い。行政が把握しきれていない被害もあるという。ワサビ田の修復に四苦八苦する農家がある一方、もともと後継者不足に悩む中で、被災を機に廃業を検討する農家もある。いまだに復興への道のりは見えない。

友人らの協力を募りようやく一部が復旧したワサビ田を見詰める山崎貴正さん=9月中旬、静岡市清水区河内
友人らの協力を募りようやく一部が復旧したワサビ田を見詰める山崎貴正さん=9月中旬、静岡市清水区河内
台風15号の被災から1年近く経過した今も土砂に埋まったままの望月芳郎さんのワサビ田=9月中旬、静岡市清水区河内
台風15号の被災から1年近く経過した今も土砂に埋まったままの望月芳郎さんのワサビ田=9月中旬、静岡市清水区河内
ワサビ田の近くを流れる沢からの水の取り込み口を手作業で工事する望月芳郎さん親子。土砂崩れがそのままになっている=9月中旬、静岡市清水区河内
ワサビ田の近くを流れる沢からの水の取り込み口を手作業で工事する望月芳郎さん親子。土砂崩れがそのままになっている=9月中旬、静岡市清水区河内
清水区河内地区
清水区河内地区
友人らの協力を募りようやく一部が復旧したワサビ田を見詰める山崎貴正さん=9月中旬、静岡市清水区河内
台風15号の被災から1年近く経過した今も土砂に埋まったままの望月芳郎さんのワサビ田=9月中旬、静岡市清水区河内
ワサビ田の近くを流れる沢からの水の取り込み口を手作業で工事する望月芳郎さん親子。土砂崩れがそのままになっている=9月中旬、静岡市清水区河内
清水区河内地区


 「被災当初は復旧を諦めようと思いました」。標高約700メートルの場所にワサビ田を構える山崎貴正さん(49)は今月中旬、しみじみとそう振り返った。
 地区では若手。交流サイト(SNS)などで募った友人ら延べ300人が協力し、手作業で石積みなどを直した。被災した6割は元通りにならず、次の被災に備えワサビ田の横を通る水路を広げたため、収穫量は落ちた。今夏の記録的猛暑でワサビが腐るケースもあり、追い打ちをかける。
 「被災当時から何も変わっていない」。半世紀続く約10アールのワサビ田を守る望月芳郎さん(89)はため息をついた。3万本を育てるワサビ田の7割が土砂に埋まったまま。長男(61)と2人で沢からの水の取り込み口を手作業で工事する。
 軽トラックがやっと通れる農道には重機が入れないことから復旧工事のための土木業者の見積もりが取れず、国などへの被害報告と補助金申請ができていない。こうした事情などから望月さんのワサビ田は市が把握する「全市の被災面積約40アール」には含まれない。
 国から激甚災害指定された台風15号の被災。市農地整備課によると、40万円以上の復旧工事には国と県、市の補助金により大半がカバーされる。ただ「農業見習い」の若者も訪れる葵区有東木地区に比べると、清水区河内地区では所有者が復旧自体望まないケースなどもあるという。
 清水わさび生産組合の男性役員(62)は「(組合員以外も含め)農家20~30軒のうち6~7割は被災から立ち直っていないのでは。清水のワサビ作りの火を消さないため、もがいている」と語る。
 (清水支局・坂本昌信)

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