運転免許 安全技術搭載車「サポカー限定」切り替え 静岡県内でもじわり 不安抱える高齢者らに推奨

 主に加齢などで運転に不安がある高齢者らに推奨する「サポートカー限定免許」。静岡県警交通部運転免許課によると、県内では9月15日時点で8人が同免許に切り替えた。2022年5月の制度導入以降、免許の「更新」か「返納」に加え、悲惨な交通事故を防止しつつ、生活の足を確保する“第三の選択肢”として利用者が徐々に増え始めている。

「サポートカー限定」が表記された杉山さんの更新後の免許=9月中旬、静岡市清水区(画像の一部を加工しています)
「サポートカー限定」が表記された杉山さんの更新後の免許=9月中旬、静岡市清水区(画像の一部を加工しています)

 同免許への切り替えは、高齢者自身の身の安全を守り、運転時にかかる心理的ストレスを軽減する効果のほか、地域社会や家族に対して安心感を与えるメリットがある。ただ、制度自体の浸透不足や理解不足から、同免許への切り替えは23年3月末時点で全国でもわずか17人にとどまり、県内は0人だった。県警が高齢者向けに設置した運転支援の電話相談窓口にも、同免許に対する問い合わせは月に数件ある程度と、普及啓発は進んでいなかった。
 本県の同免許切り替えを後押しした一因が、日本自動車販売協会連合会県支部(自販連)が3月から行ったキャンペーンだ。同免許へ切り替えた人を対象に商品券を贈る同キャンペーンは全国的にも珍しく、同連合会員の自動車ディーラー各社が店頭や顧客訪問などで積極的にPRを続けた。6月に富士宮市の90歳男性から最初の応募があると、その後も70代以上の高齢者中心に応募数が増えた。
 静岡市清水区の杉山富喜子さん(79)は9月上旬、車両の購入を機に同免許へ切り替えた。元々車に乗る機会は少なく、最近では乗る際に「大きな事故を起こしてしまうのでは」という不安を抱え、免許返納も視野に入れていた。同免許の存在は知らなかった。車の購入時に足を運んだ自動車ディーラーで同連合会のキャンペーンを目にした時、夫の昇さん(70)の「良い機会じゃないか」という勧めもあって切り替えを決めた。富喜子さんは「返納は“剝奪”される感じがあったので、条件付きであっても、自分を証明する免許が残ったことは正直うれしい」と話した。
 県警によると、過去3年間は減少傾向にあった県内の高齢者が関係する交通事故件数は今年に入って増加に転じていて、自分だけでなく家族や周囲に安心感を与えるサポートカー限定免許の意義は高まっている。交通企画課の長倉隆一管理官は「サポートカーには、安全運転を補助する先進技術が搭載されているが、機能への過信は禁物。他人を思いやる安全運転を心がけてほしい」と訴えた。


 サポートカー限定免許 衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置など先進安全技術を搭載した普通車「サポートカー」のみを運転できる運転免許。大型、中型、準中型、普通のいずれかの運転免許を受けている人が対象。免許切り替えの申請は免許更新や再交付時を含め、いつでも可能。乗っていた車に先進技術装置を後付けした場合は対象外。

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