病院救急救命士、処置は搬送患者限定… 法的課題発信で静岡県内初の団体設立へ

 病院に勤務する静岡県内の救急救命士が10月7日、連携組織となる初めての団体「県病院救急救命士部会」(仮称)を設立する。県内の病院救急救命士は30人ほどと限られる上、入院患者の容体急変時に搬送患者と同様の救命処置ができないなどの課題があるため、救命士同士で連携しながら法的な課題を情報発信していく。

部会立ち上げの準備を進める病院救急救命士ら=焼津市の甲賀病院
部会立ち上げの準備を進める病院救急救命士ら=焼津市の甲賀病院

 救命士の救命処置は、医師の具体的な指示に基づく特定行為を含む30以上の項目がある。法的には「重度傷病者が病院に搬送されるまで」と定義されていたが、2021年の法改正で「入院するまで(しない場合は医療機関に滞在する間)」となり、活動範囲も「病院前」から「救急外来」までは広がった。
 ただ、部会立ち上げの準備を進めている甲賀病院(焼津市)によると、法改正後も搬送患者に限定されている状況は変わらず、入院患者は対象外のままという。同病院の病院救急救命士仲田幸司さんは「日々搬送で培ってきたスキルがあっても、入院患者の容体が急変した場合に、一般人と同じ領域の処置しかできない。法律の壁を感じている」と話す。
 同病院は救急車を運用しているため、11人が病院救急救命士として搬送時に対応している。同病院の調べでは、県内は8病院で、それぞれ数人ずつ勤務していている。看護部副部長の望月俊明さんは「人数の少なさから、社会的に存在が認知されていないのが実情。まずは発信から始め、病院救急救命士の役割を確立していきたい」と意気込む。
 静岡市で開く初会合には県内の6病院から病院救急救命士約10人が参加する見込みで、各病院の現状や今後の活動計画を話し合う。顧問には藤枝市立総合病院、浜松医科大付属病院などの医師10人が就任する。
 (社会部・大須賀伸江)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞