浜松・上島諏訪神社「村芝居」 四半世紀の歴史に幕 14日の秋大祭でぱっと一花

 浜松市浜北区上島の上島諏訪神社の秋大祭に合わせて、住民がほぼ毎年上演してきた「村芝居」が14日で終幕を迎える。神社の火災やコロナ禍など困難を乗り越え、地区の絆を強めるのに一役買ってきた催しも、携わる人たちの高齢化で続けることができなくなった。「一座」の仲間たちは「最後だからこそ、ぱっと明るく盛り上げたい」と話し、稽古に励む。

稽古に励む村芝居の出演者たち。「最後だからこそ明るく盛り上げたい」=浜松市浜北区の上島諏訪神社
稽古に励む村芝居の出演者たち。「最後だからこそ明るく盛り上げたい」=浜松市浜北区の上島諏訪神社

 「この場面で、たらいを抱えてみようかね」。4日夜、時代劇風の衣装を着た住民らが神社境内の特設舞台でせりふや立ち位置、照明の具合などを確認した。芝居に携わる25人ほどの多くは既に70代以上。おどけて小道具を掲げる仲間を笑う声も響き、和やかな雰囲気だ。座長の上野耕司さん(65)は「人を楽しませるために自分たちも楽しむ」とやりがいを語る。
 村芝居は1996年、祭りの実動部隊「若連(わかれん)」を40歳で終えた人たちが始めた。脚本は初回から宮地隆さん(76)が担当。演劇に携わったことはないが、「誰かがやらなきゃいけないから引き受けたら、長く続いた」と振り返る。時代小説や落語を基に地区の歴史を織り交ぜた。
 せりふは覚えやすいようなるべく短くした。愛嬌(あいきょう)たっぷりの芝居は名物行事になり、例年200人以上が集まった。評判を聞いて市外から見物客が来たこともある。
 2000年に神社本殿が焼ける火災が起き、01年まで2年続けて休演。東日本大震災が起きた11年も自粛した。一座はむしろ結束を強めた。ただ、年を追うごとに同様の催しをしてきた周辺地域で高齢化などによる取りやめが相次いだ。上島地区もコロナ禍で20~22年の中止で機運は下がり、今年は議論した末に「最後に一花咲かせよう」と上演を決めた。
 今回は長屋の住人らが、つじ斬りに遭った仲間のために犯人を捕まえようと奮闘する物語。上演時間は午後6時15分ごろから約2時間。上野さんは「最後はみんな笑顔でカーテンコールをやりたい」と語る。
 同芝居の問い合わせは上野さん<電080(3632)2052>へ。
 (浜松総局・松浦直希)

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