浜松市佐久間と「強い絆」 元ウィーン・フィル奏者ヤイトラーさん 音楽交流33年

 オーストリアの元ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団バストロンボーン奏者のカール・ヤイトラーさん(76)=ウィーン在住=が、中山間地域の浜松市天竜区佐久間町で初のコンサートを開いてから33年目を迎えた。1日に開かれた交流コンサートでは、トロンボーンの演奏と指揮を披露し、大きな拍手に包まれた。ヤイトラーさんは「健康でいられる限り、佐久間へ通い続けたい」と話す。

コンサートで指揮をするカール・ヤイトラーさん=10月上旬、浜松市天竜区佐久間町の佐久間歴史と民話の郷会館
コンサートで指揮をするカール・ヤイトラーさん=10月上旬、浜松市天竜区佐久間町の佐久間歴史と民話の郷会館

毎年訪れ演奏会や指導
 佐久間歴史と民話の郷会館ホールで1日に開かれたコンサートでは、ヤイトラーさん作曲の「佐久間町のファンファーレ」を皮切りに、ヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」など10曲を披露した。地元の佐久間吹奏楽クラブや浜松湖北高佐久間分校吹奏楽部と共演し、ウィーンの音楽や日本の人気曲を演奏した。
 ヤイトラーさんが佐久間町と出合ったのは1990年。演奏旅行で日本国内を巡っていた時、日本人の友人の紹介で佐久間を知り、当時の佐久間町長や地元企業の依頼もあってコンサートが実現した。会場は佐久間ダムで、千人以上が足を運んだ。
 コンサートの後、町側から「来年も来てほしい」と要請があり、ヤイトラーさんは快諾。地元住民の温かな歓迎に触れたり、ウィーンの音楽を地元の高校生に教える機会などを通じたりして特別な地域になった。
 毎年通い続ける中、新型コロナウイルスの流行で20、21年は訪問をやむなく中断した。ウィーンでも演奏活動はできず閉塞感が漂う中、ヤイトラーさんの佐久間への思いは変わらなかった。コンサートの運営に携わる浜松市職員とメールでやりとりし、再開に向けた準備を進めた。昨年、3年ぶりにコンサートを開催することができた。「懐かしい友人たちと再び会うことができてうれしかった。まるでコロナがなかったように前向きな気持ちになった」と笑顔で振り返る。
 これまで北海道から九州まで国内各地を訪れたが、30年近く訪れているのは佐久間だけという。今でも佐久間を訪れる度、高校生や大人に演奏の助言をしている。
 ヤイトラーさんと約30年交流がある佐久間吹奏楽クラブの仲市恵子代表(62)は「最初は素人の集まりで始まったクラブだったが、フレンドリーに接して温かく教えてくれた」と振り返る。ヤイトラーさんは「偶然生まれたつながりだが、佐久間には強い絆を感じている。第二のふるさとのような場所」と話した。
 (水窪支局・大沢諒)

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