静岡県民が舞台劇創作 「ラウドヒル計画」10年 勝山康晴総監督「何かがうごめく舞台に」

 静岡市民文化会館(同市葵区)を拠点に県民が舞台劇を創作するプロジェクト「ラウドヒル計画」の新作「GET OVER イエヤススマイルフォーユー」が21、22の両日、同館で上演される。プロジェクト発足から10年の節目に、役者、スタッフ総勢100人超の大型作品に挑む。総監督を務める勝山康晴(藤枝市出身)は「金銭では換算できない、何かがうごめいているステージを見せたい」と言葉に力を込める。稽古に励む「GETOVER」の出演者=静岡市葵区の市民文化会館
 舞台は現代。平凡な生活を送っていた新シズオカ高校の教師、若竹アオイはある時から毎夜、同じ夢を見るようになる。イエヤスを名乗る少女がシズオカを守るため奮闘する夢。しばらくして、「一緒に少しだけ未来を変えてみませんか」と語りかける来訪者が現れる。勝山は「過去、現在、未来。歴史感覚を持つことで、自分の現在地が安定する」と脚本に込めた思いを語る。
 長年、ダイバーシティ(多様性)を表現したいと考えている。今回、障害者を含めた6~78歳が同じステージに立つ。「車社会の静岡では、実は障害者らと関わる機会は少ない。舞台で協働する姿を見せることでさまざまな可能性を見いだせる。それこそが静岡の財産になる」。コスパ(費用対効果)やタイパ(時間対効果)が重視される世の中に反し、稽古日にはあえて休憩時間を長く取り、メンバー同士のコミュニケーションを促す。「今、こういう時間をつくり出すことにむきになっている」と笑う。スタッフと意見交換する勝山康晴
 東京発の地方アイドルが席巻していた2013年、県民による地元静岡をテーマにした舞台芸術を展開しようと始まったプロジェクト。自ら企画を持ち込み「10年は続けよう」と一つ一つ実績を積み重ねてきた。オーディションで選ぶ各公演の出演者の3割は演劇やダンスの経験がなく、「明日を顧みず情熱を爆発させる姿がかっこいい」。一方で、「発表会でなく、お金を払って来てもらう公演」と、一切の妥協を許さない。
 新型コロナウイルス禍に加え、22年1月に同プロジェクトの脚本家大野裕明が亡くなったことがメンバーの意識を変え、それぞれの役割を超えた議論が生まれるようになった。「参加でなく、参画している感じがある。家、学校や職場以外のサードプレイスとして理想的。誰にでもこういう場所があるといいなと思う」
 (教育文化部・鈴木明芽)

10月21、22日静岡で公演
 公演は21日午後3時、22日午後2時。SBSの近江由佳アナウンサーも出演。チケットは一般3000円、25歳以下と障害者手帳を持つ人は1500円。問い合わせは同館<電054(251)3751>へ。

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