静岡人インタビュー「この人」 玄米おにぎりを開発した米農家 湯山直文さん(小山町)

 農業振興に力を注ぐ都内の元商社社員とタッグを組み、自身が小山町内で育てた米を使った冷凍玄米おにぎり「玄米deむすび」を同町の道の駅ふじおやまで販売し始めた。地域農業の発展や名産の「水かけ菜」の食文化を守りたいと願う。75歳。

湯山直文さん
湯山直文さん

-開発のきっかけは。
 「農と食の事業を展開する『3181Farm』(さいわいファーム、東京都)の亀山剛太郎さん(49)と出会い、農業振興の思いに共感した。亀山さんたちが持つ独自の熟成技術で玄米本来の柔らかさ、香ばしさ、白米に近い甘みや食感を実現した冷凍おにぎりを完成させることができた。小山町の米の魅力を強く感じてもらえると思う」
-米の特徴は。
 「おにぎりに使用しているのは『ひとめぼれ』。裏作で育てた水かけ菜を緑肥として土にすき込み、富士山麓の湧水で栽培していて、甘みや数値では表れにくいもっちりとした食感が特徴。一方、水かけ菜を緑肥として一般的な米を育てるのは難しく町内では大半の農家が同様の方法でもち米を栽培している」
-最近の地域農業の課題は。
 「漬物製造業が許可制になった食品衛生法改正に伴い、北駿地域特産の水かけ菜漬けの生産継続が危ぶまれている。米農家が裏作として個人で生産しているケースが多く、水が美しい富士山麓ならではの食文化。生産をやめる人も出てしまいそうだが、なんとか後世に残したい」
-今後の取り組みは。
 「最近は肥料高騰などの課題もある。自分の栽培法を広めることは他の農家を助け、水かけ菜の食文化継承にもつながるのではないかと感じる。おにぎりは町のふるさと納税返礼品にも加わった。町の農業の継承と発信の両面に貢献していけたら」
 (御殿場支局・塩谷将広)

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