官民連携で巴川治水対策 雨水貯留施設、計画の8割整備 公共用地確保に課題

 静岡県静岡土木事務所は26日、巴川の流域治水対策の一環で、静岡市清水区の県営吉川団地で整備を進めている雨水貯留施設の工事現場を報道公開した。1974年7月の七夕豪雨を教訓に、官民連携で整備する雨水貯留施設の容量は計画目標値の約8割に達する一方で、県施設の整備率は42%にとどまる。2022年の台風15号災害など近年、激甚・頻発化する豪雨に対応できず、巴川流域で大規模な冠水が発生している。県は国の協力を得ながら整備を加速させたいとしている。

洪水リスクを軽減する雨水貯留施設の説明をする工事関係者=26日午前、静岡市清水区の県営吉川団地
洪水リスクを軽減する雨水貯留施設の説明をする工事関係者=26日午前、静岡市清水区の県営吉川団地


 雨水貯留施設は、大雨時に一時的に雨水をため、河川水量を減らして下流域の負担を軽減する。巴川流域では80年代に整備が始まり、既に学校や公園、民間施設など約800カ所に計約68万立方メートル分の貯留施設が設けられている。
 県静岡土木事務所によると、2028年度ごろまでに官民で計86万立方メートル分の整備を目指す。23年度から5カ年で進める県と市の治水対策が国の浸水対策重点地域緊急事業に採択され、遊水池整備や河道掘削などとともに、5カ所の雨水貯留施設の新設・増強に取り組む。
 県が公開した吉川団地では、駐車場の地下に雨水を貯留する工事が進む。廃プラスチックを再利用した50センチ四方の貯留槽を5千個埋設し、約400立方メートルを貯水できる。県は本年度、葵区の県営麻機羽高団地でも雨水貯留施設を着工する。
 同事務所によると、遊水池や放水路といった施設に比べ、雨水貯留施設は短期間で整備しやすく即効性が期待できるが、地上に建物がない土地を確保する必要がある。学校のグラウンドなどの公共用地はほぼ整備済みで、県や市が貯留施設を設置できる場所は限られているという。
 県は、流域全体で利用可能な公共用地を地道に洗い出すなどして目標達成を目指す。同事務所の担当者は「県だけでは難しい面がある。国とも連携して貯水施設の整備率を伸ばしたい」と話した。
 (政治部・豊竹喬)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞