高温で種残す 植物を作出へ 沼津の慶応大AOI・ラボ

 地球温暖化に伴う農作物の高温障害が顕在化する中、沼津市のAOI―PARC(アオイパーク)に拠点を置く慶応大SFC研究所AOI・ラボ(代表・神成淳司教授)は、高温に強い植物の作出を目指して研究を進めている。先端農業推進を掲げる県の「AOIプロジェクト」の一環で、突然変異の誘発を通じて、高い気温でも安定して種子をつける個体を見いだすのが狙い。研究結果をさまざまな農作物に応用展開し、種子の安定供給に寄与したい考えだ。

イオンビーム照射し、27度で育てたシロイヌナズナ。左は突然変異で実をつけた一群
イオンビーム照射し、27度で育てたシロイヌナズナ。左は突然変異で実をつけた一群

 同ラボの樽谷芳明特任准教授が、アブラナ科のシロイヌナズナを使って実験を重ねている。シロイヌナズナは高さ40~50センチに成長し、発芽から種をつけるまでは数週間程度。突然変異の実験を行う上で、短期間で種子が得られるのは大きな利点だ。
 シロイヌナズナの種子に、DNAを損傷して突然変異を誘発させる意図でイオンビームを照射し、通常では種子の入った実がつかない気温27度で栽培した。その結果、計144系統547個体の中から、種をつける可能性がある49個体が取得できたという。
 今後はこの個体から得られた種子が、同じ27度で同じように種子をつけるかの実証に進む。より高い温度帯で実をつけ、種子を残す個体を探る実験も続ける。
 研究で得られた知見は、シロイヌナズナと同じアブラナ科の農作物にも応用展開する予定。樽谷特任准教授は「まずは、35度でも安定して結実するシロイヌナズナの作出を目指す」と話している。
 (教育文化部・橋爪充)

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