市民の声 施策に生かす 中野浜松市長 就任半年インタビュー

 16年ぶりに浜松市の新たなかじ取り役を担った中野祐介市長(53)が1日で就任から半年を迎えた。人口減など社会課題が山積し、来年1月に行政区再編に伴う3区移行を控える浜松市。中野市長は「今まで以上に市民の声を聞き、市民が行政との距離を感じないように注力する」とあらためて決意を語った。
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 ―半年間を振り返って。
 「総務省時代に地方自治体で5回勤務し、地方行政の現場は分かっているつもりだったが、市長の仕事はこんなにも大変なのか、と。市民の期待と批判がダイレクトに来るので、あらためて重責を感じている。いろいろな現場に行き、多くの人から話を聞きたい。25日からは住民と対話し、市政報告を行う『出張市長室』を始めた。市民の声を施策に生かすため、年末までに10カ所で開催する」
 ―印象的な出来事は。
 「新型コロナが5類に移行し、かつての日常が戻ってきた。就任直後は浜松まつりがあり、松本潤さんらによる騎馬武者行列も大盛況だった。ヤマハの都市対抗野球大会の準優勝、浜松開誠館高の市内から21年ぶりの夏の甲子園出場といったスポーツの話題でも非常に盛り上がった。一方、豪雨による土砂災害などでは多くの被害が出た。復旧、対策を迅速に進める」
 ―人口減への対応は。
 「進めるのは『まち・ひと・しごと』の創生。仕事があり、生活が安定することで、結婚し、子どもを産み育てることにつながる。さらにまちに魅力が生まれることで、浜松で暮らしたい、暮らし続けたいということになる。まずは層の分厚い浜松の産業をさらに活性化させる。そこに子ども・子育てを中心とした人づくりの支援、健康で長生きするための環境づくり、スポーツや文化を含めたまちの魅力を向上させる施策を組み合わせる。その点で、静岡大と浜松医科大の運営法人統合・大学再編は非常に意味がある。魅力ある大学が存在することで、進学を契機とした若者の流出を防ぎ、流入増にもつながる」
 ―3区移行への対応は。
 「行政区を7区から3区に再編することで、将来、仮に人口が減少しても行政サービスを維持できるくらいの強い足腰ができる。『区役所が遠くなる』と不安になる市民がいるかもしれないが、行政サービスが低下することは決してない。今まで以上に職員が現場に出て市民の声を聞き、施策に生かすことを心がける。特に天竜区役所には区政担当の副市長を置き、中山間地域振興の部局を本庁から移す。市民が行政との距離を感じないように注力する」
 ―家庭ごみ処理有料化についての考えは。
 「地球環境を考えた際、ごみ減量とリサイクルの推進は欠かせない。行政サービスにおける市民負担の公平性という観点もあり、長い目で見ると、有料化は進めるべきと思っている。ただ、今は物価高騰などで市民生活が圧迫されている。市議会に条例案を提出する時期は年内に示し、開始するタイミングについては慎重に考えたい。もちろん、有料化を待たずに、ごみ減量、リサイクル推進の取り組みは進めていく。紙おむつのリサイクルについても研究を始める」
 ―市民にメッセージを。
 「地域振興においては市民に自分事として積極的に市政に関わってもらうことが一番のポイント。さまざまな自治体を見てきたが、市民が『行政にお任せ』という自治体は衰退に向かっている。より多くの市民が浜松の将来に関心を持ち、行動に移してほしい。市としても浜松の現状や方向性を積極的に発信する」
 (聞き手=浜松総局・宮崎浩一)

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