【D自在】「駿河湾の宝石」サクラエビ
モルガナイトという宝石がある。淡いピンクで、鉱物としてはエメラルドやアクアマリンと同じ「緑柱石(ベリル)」。米宝飾大手ティファニーの上級技師クンツ博士が発見し、博士の友人で顧客の金融王J・P・モルガンにちなんで1910年に命名された。
「駿河湾の宝石」と呼ばれるサクラエビの秋漁が始まった。初日(1日)の水揚げは約1トンと低調だったが、まだ高い水温の影響らしい。国内では駿河湾でしか漁がされないサクラエビの群れが偶然漁獲されたのが1894(明治27)年。人類の前に姿を現したのはモルガナイトとほぼ同じ頃ということになろう。
4月の誕生石「モルガナイト」(全国宝石卸商協同組合ホームページより)
春漁が本格化する4月の誕生石に絡めピンクダイヤモンドとサクラエビでコラム「大自在」を書いたことがある。その後2021年、全国宝石卸商協同組合などがモルガナイトを4月の誕生石に追加した。
宝石に例えられるのは見た目からだと思っていたが、サクラエビには発光器があり、夜の海で光るという記載がネットにあった。ベテラン漁師に聞くと「見たことない」そうだが、その昔、群れが海面に近づくと辺りが白っぽく見え、「しらみ」と呼んだと記述した書籍もある。ミステリアスでいい。
サクラエビを豆腐やネギとすきやき風に煮込む漁師めし「沖あがり」が文化庁の「100年フード」に登録されて初めての冬。 12月には和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて10年になる。
食文化を通じた観光「ガストロノミーツーリズム」に格好の話題がサクラエビにはいくつもある。130年の節目を迎える来年の春漁につなげサクラエビ産業を持続可能にするため、私たち消費者も資源管理への関心を高めたい。
(論説副委員長・佐藤学)