脳卒中専門医不足、システムで補う 湖西と浜松の病院が連携深化 迅速な画像診断へ

 浜松医療センター(浜松市中区)と湖西市立病院が今夏、コンピューター断層撮影(CT)画像を両病院間で共有する「画像連携システム」を導入し、脳卒中専門医の不足への対応に連携を深めている。これまでも専門医が所属していない湖西市立病院に同センターから週に1度、専門医を派遣してきた。両病院の医療従事者は「市民の安心感を醸成したい」と話し、迅速な治療に取り組む。

脳卒中の画像診断の連携について説明する浜松医療センターの中山禎司・脳神経外科部長(左)と平松久弥・脳卒中センター長。迅速な判断と治療を目指す=10月上旬、浜松市中区の浜松医療センター
脳卒中の画像診断の連携について説明する浜松医療センターの中山禎司・脳神経外科部長(左)と平松久弥・脳卒中センター長。迅速な判断と治療を目指す=10月上旬、浜松市中区の浜松医療センター


 CT画像の連携システムは専用の端末を使う。湖西市立病院に脳卒中の疑いのある患者が運ばれると、患者の名前などは伏せて画像が同センターに送信される。診断は同センターの中山禎司・脳神経外科部長か、同センター内で、脳卒中に対応する医師10人が所属する脳卒中センターの平松久弥センター長が担う。
 治療が必要な場合、患者は救急車で30~40分かけて浜松医療センターに運ばれる。中山部長は「脳の機能保護のためにはいち早い診断と正確な治療が必要だ」と指摘する。9月末までに7件の画像診断協力が行われた。
 連携の深化は2022年11月に浜松、湖西の両市が持続可能な地域医療の提供体制確保を目的に結んだ協定の一環。画像診断の連携により、湖西市立病院にとって専門医から治療の判断を仰ぎ、相談も受けられるメリットがある。
 脳卒中の専門医がおらず、画像連携システムもない医療機関の場合、電話で専門医のいる病院に連絡を取って症状を説明し、CT画像の入ったフィルムやCDを持ち込むといった手順が必要になることもある。画像連携システムに比べ、判断時間に差が生じる可能性がある。
 湖西市立病院は画像診断に関する連携を浜松市内の別の病院とも行うが、専門医を派遣する同センターの協力を得られたことで、より積極的な治療につながっているという。湖西市立病院の中山親一・診療技術部長は「市民の安心感の醸成という点で浜松医療センターとの連携は大きな役割を果たしている」と強調する。
 (浜松総局・松浦直希)

 脳神経外科 負担大きく 他診療科に比べ少数
 脳のコンピューター断層撮影(CT)画像を別の病院の専門医が診断する連携の背景には、脳卒中の専門医が全国的に少ないという事情がある。
 厚生労働省の統計資料(2020年12月末時点)によると、20人以上の入院設備がある病院における脳神経外科医は6214人(全体の2.9%)。整形外科の1万4419人(6.7%)、精神科の1万2163人(5.6%)などと比べて開きがある。
 浜松医療センターの中山禎司・脳神経外科部長は「脳卒中は24時間365日の緊急対応が必要な上に拘束時間が長く、医師にとって負担が大きい。脳神経外科を希望する医師は少ない」と話す。その上で「脳卒中の専門医を増やすのが難しい中では、画像連携のようなシステムの拡充がより広く行われていくのではないか」とみる。

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