認知症高齢者の徘徊対策 見守りシステム登録を【西部 記者コラム 風紋】

 性別や年齢、服装、背丈など、身体の特徴とともに袋井警察署が行方不明者の捜索の協力を呼びかける同報無線を度々耳にする。行方不明事案のほとんどは認知症が原因で徘徊(はいかい)する高齢者。最悪の場合、徘徊中に事故などによって死亡してしまうケースもある。
 同署生活安全課によると、ことし1月~10月末までに同署が認知症と思われる65歳以上の高齢者を保護した件数は58件(暫定値)に上る。昨年も同時期で62件の保護があり、およそ5日に1回は高齢者が保護されたことになる。袋井市健康長寿課によると、同市内では昨年10月からの1年間で、捜索願の出た高齢者が亡くなった状態で見つかった事案が2件あり、うち1件は認知症が原因と推察される。高齢化が今後も進行することを踏まえれば、対策には一層力を入れる必要がある。
 同市は行方不明者の迅速な発見、保護を目指して2011年に「はいかいSOSネットワーク」を発足し、登録者には衣服や持ち物に貼付できるQRコード付きのシールを配布。実際に徘徊する登録者を市民や協力事業所が発見した場合は、QRコードを介して家族らと連絡が取れるシステムを整えた。
 警察や行政だけでは限界がある徘徊対策。市は地域全体で高齢者を見守れる仕組みとしてシステムの推進、浸透を目指す。11月6日に市議会全員協議会で示した「市長寿しあわせ計画」の素案ではサービスの充実に取り組むと説明。同8日には袋井東地区の住民を対象にしたシステム活用の模擬訓練を実施し、約35人の市民が参加した。認知症への理解を深め、実用性を高めるためには、住民を巻き込んだ定期的な訓練の実施が今後も必要だろう。
 また、根本的にはシステムへの登録者を増やすことが欠かせない。市によると、昨年は6件の捜索願が出たが、届け出時点で登録が確認できたのは1件だけだった。高齢者がいる家族はまずは登録し、見守り体制を強化してほしい。子どもの見守りに使われるGPSも有効な手段。民間のサービスにはなるが月額千円ほどで利用できる。行政と警察、地域、当事者家族全体での連携が求められる。
 (袋井支局・北井寛人)

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