記者コラム「清流」 終わりに響く音

 「クワアアアアアア」。ハロウィーンが近づく10月下旬、悲鳴を絞り出したような鳥の鳴き声が繁華街の空に響いた。あまりの不気味さに新約聖書のヨハネの黙示録(アポカリプス)で世界の終わりを告げるとされる音「アポカリプティックサウンド」を連想した。
 街はコロナ禍以降、何かがおかしい。仮装を楽しむハロウィーンでも悪乗りする若者が増えた気がする。ホストクラブで大学生が亡くなる傷害致死事件や美人局(つつもたせ)強盗など若者の凶悪事件も相次ぎ、体感治安の悪化を感じる。
 あの異様な鳥の声は現代への黙示録か、時代の変化が生んだひずみに響く誰かの悲鳴か。理想を追う“仮装”ばかりで現実感覚の薄れた社会は善悪の判断をも鈍らせる。あの声はそんな世界なら終わりが来るという警告なのかもしれない。
(社会部・吉田史弥)

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