野村萬斎監修「アクトシティ能・狂言」 伝統芸能、スペクタクルに 【動画あり】

 狂言師野村萬斎が監修する「アクトシティ能・狂言」(浜松市、静岡新聞社・静岡放送など主催)が12月17日、同市中区のアクトシティ浜松で開かれる。600年超の歴史を持つ能・狂言を、現代劇などで用いる特殊効果や空間演出を取り入れて繰り広げる。萬斎は「こんなにスペクタクルなんだとお分かりいただけたら」と語る。

「伝統芸能を楽しむきっかけになれば」と語る野村萬斎=都内(写真部・宮崎隆男)
「伝統芸能を楽しむきっかけになれば」と語る野村萬斎=都内(写真部・宮崎隆男)


 萬斎が映像の色味、幕1枚の素材まで吟味してつくり上げる「アクト―」は2011年に始まり、5回目を迎える。今公演に向けて最初に決めたという能の演目「紅葉[もみじ]狩[がり]」は、武勇で知られる平維茂と女性に扮[ふん]した鬼たちとの戦いを描く。作品の舞台である長野・戸隠山の秋錦を再現する。一方、狂言の「首引[くびびき]」は姫鬼に人間を“お食い初め”させようとする親鬼が主役。「狂言では人間と鬼が対峙[たいじ]すると、鬼に人間らしさが現れるのがパラドキシカル(逆説的)で面白い。妖艶でおどろおどろしい能の鬼と、親子の情愛が感じられる狂言の鬼の対比が楽しめる」と狙った。
 「首引」では、親鬼を萬斎、姫鬼を長男裕基が演じる。「鬼の習性として人間を食べ、それを子どもに強要しなければいけないというところは、狂言の継承と似ているかもしれない」と苦笑する。姫鬼は鬼でありながらちゃめっ気があり、嫌がる子を前にあの手この手を使う親鬼の姿は現代のモンスターペアレントのよう。「室町時代にある程度形づくられた芸能はずっと人間模様を映し続けている。だから残っているのだと感じてほしい」
 近年は、文化勲章を受章した人間国宝の父万作との3世代で舞台に立つことも多い。「われわれが行っている芸能は型から入る堅苦しいものではなく、最終的に表現者として自由になるために修練していくのだということが、父を見れば明らか」。自身の立場は「中間管理職」と認識する。伝統芸能に新風を吹き込むためにドラマや映画、現代劇などに積極的に携わり、常に学び、挑戦する姿勢を崩さない。
 今回の演出にも「作者の意図を考え、作品が持つエネルギーを一段上げられたら」との思いで取り組む。「役者に思い切ったことをさせてしまう時もあるけれど、ありがたいことに毎回出演者からご好評をいただく。お客さんも待ち望んでいる感じが伝わってきて楽しみ。これほど張り切ってやることもないですよ」と自信をのぞかせた。
 (教育文化部・鈴木明芽)


 「アクトシティ能・狂言」は午後3時開演。S席7千円、A席5500円、学生席1500円(24歳以下、当日指定)。問い合わせは浜松市文化振興財団<電053(451)1114>へ。

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