紹介力活用、地元と協業 開業35年 後藤毅彦・遠鉄百貨店社長【聞きたい】

 開業35周年を迎えた百貨店のトップに就いて半年。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴って業績が回復する一方、人手不足などの課題に直面する中、地元商品の紹介、「まちなか」との協業など地域色を生かした経営戦略を練る。

後藤毅彦遠鉄百貨店社長
後藤毅彦遠鉄百貨店社長


 ―足元の経営状況は。
 「紳士服や婦人服、化粧品などの外出関連が好調で前年より収益は回復したがコロナ前の2019年と比べると不十分。9月以降は買い物以外の外出傾向が強くなり、厳しい状況と実感している。品質の高い商品を求める客層と節約層の二極化が進み、日常的に来店する層が少し細くなった」
 ―店舗づくりの方策は。
 「地元商品の紹介に力を入れ、成果が出始めている。2月にえんてつグルメセレクトとして生まれ変わった本館地下1階の売り場は、若手社員が中心に新規開拓した有名店のパンやギョーザなどを扱い、販売が好調だ。催事は人気イラストの原画展などをこれまでにないほど開催し、普段とは異なる客層に足を運んでもらえた。9月に閉店したルイ・ヴィトンの後テナントに入る店とは最終的な交渉をしている」
 ―経営課題は。
 「販売員の確保が非常に困難になった。従業員の多能工化などの効率化を進めてきたが5類移行後に急激に忙しくなり、負荷が増している。待遇や給与などの改善を長期的に対応する。また、長年の課題でもある若年層が来店する空間づくりを学生やSNSなどで意見を聞きながら進めたい」
 ―街中のにぎわいづくりにどう貢献するか。
 「コロナ前以上に地域やまちなかとの協業に取り組む。浜松駅前で実施中のイルミネーションは、複数の商業施設が一緒に行うことを重視して企画した。百貨店の強みである良いものを紹介する能力を生かそうと、出展者主体の展示販売イベントを建物に隣接する屋外スペースで11月12日に開いた。長く続けるには単独では限界がある。街中に人を呼び、回遊してもらうきっかけをつくる役割を果たしたい」
 (聞き手=浜松総局・白本俊樹)

 ごとう・たけひこ 1989年遠州鉄道入社。遠鉄自動車学校社長、遠鉄タクシー社長などを経て23年5月から現職。浜松市東区出身。58歳。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞