パワハラ相談、3年で倍に 労組ない小規模企業の従業員、悲痛な叫び 静岡県内

 静岡県内で、労働組合を持たない小規模事業者の従業員からパワハラなどハラスメント関連の相談が増加傾向だ。県労働組合評議会傘下の労働組合組織「ローカルユニオン静岡」(静岡市葵区)に2022年9月~23年8月までに寄せられたハラスメント関連の相談件数は83件で全相談件数の4割を占め、3年前の同時期比で倍増した。関係者は「ハラスメント解決には、悩みを抱え込まない積極的な相談が鍵を握る」と話す。
ハラスメント関連の悩みが寄せられた労働相談ホットライン=7日、静岡市葵区の「ローカルユニオン静岡」
 「他の同僚も同じ上司に同じようにパワハラを受けて辞めていった」。同評議会が7日に設けた労働相談ホットライン。電話口からハラスメントに関する相談や悲痛な叫びが相次いだ。
ハラスメント相談件数 割合の推移
 同日に電話相談し、取材に応じた元タクシー運転手の男性(51)=同市駿河区=は「同僚の業務内容が違法行為に当たるのでは」と会社に進言したが、その言動を上司に疎まれたという。上司は他の同僚に「あの人の言うことは聞くな」と悪評を触れ回り、不当な扱いをするようになった。社内で立場を失い、退職を余儀なくされた男性は「求人広告に記載した『自由な社風』は名ばかりで、実際はパワハラが横行するブラック企業だった」と吐き捨てるように話した。
 主に小規模事業者の従業員や非正規労働者が個人で加盟する同組合によると、小規模事業者などでパワハラを社内で訴える際、加害当事者が相談担当者であることも多く、経営者自身がパワハラ加害者の場合は、自社での解決は極めて難しいという。結果的に被害者が「泣き寝入り」をせざるを得なく、精神疾患を患うケースも目立つという。
 同組合の河合利夫委員長はハラスメント相談が増加している理由を「ジェンダー平等や人権意識の高まりが影響しているのでは」と推測。その上で「特に少人数で業務を行う組織での人間関係の不調は離職につながりやすい。経営層は職場環境改善に本気で取り組む必要がある」と指摘する。
 さらに、「ハラスメントはれっきとした『いじめ』行為。被害を受け困っているが、社内で声を上げにくい場合は、ためらわず相談をしてほしい」と同組合も含めた相談窓口の積極的な利用を呼びかける。
 (社会部・薬袋貴信)

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