時論(12月17日)今度はアメリカウナギか

 日本でウナギと言ったら、たいていニホンウナギのことである。流通するウナギは国産でも中国産でも、ほぼ全て養殖ニホンウナギと思われているだろう。
 近年、アメリカウナギの稚魚(シラスウナギ)の東アジアへの輸入が急増していることが、中央大の研究グループの調査で分かった。ということは、知らずに養殖アメリカウナギを食べているのか、これから食べることになるのか。
 ウナギは世界に16種3亜種いて、食用になるのはニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、東南アジアのビカーラ種。
 かつては、ヨーロッパウナギの稚魚を中国で育て、大量に日本に輸入していた。おかげでうな丼が安く食べられたが、度を越した。
 乱獲でヨーロッパウナギは「絶滅の危険性が極めて高い」として2009年、ワシントン条約により貿易が規制された。14年にはニホンウナギとアメリカウナギがレッドリストに。以来、条約の対象になるかどうかの分岐点にある。
 日本は、ニホンウナギの漁や養殖をする台湾、中国、韓国と資源管理を協議しているが、隙をつくようにアメリカウナギ取引が台頭したとなれば穏やかではいられない。ヨーロッパウナギの轍[てつ]を踏むことは避けなければならない。
 日本のウナギ産業は、稚魚も成魚・加工品も輸入なしには成り立たない。輸入稚魚の大半が漁をしない香港経由で、不透明な流通実態が問題視されている。これにアメリカウナギの稚魚が加わるとなると、問題はさらに複雑になる。
 国内の稚魚流通は不正排除へ法や制度の改定が進むが、国際取引の壁は厚く、持続可能なウナギ産業と食文化へのハードルはまた高くなったと言わざるを得ない。
(論説副委員長 佐藤学)

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