浜松のサツマイモ生産者悲嘆 害虫根絶不完全、24年も栽培できず

 浜松市の畑で昨年、サツマイモに被害を及ぼす国指定重要病害虫アリモドキゾウムシが見つかり、防除のために生産者が栽培を自粛している問題で、農林水産省の専門家会議は今年11月末に開いた検討会で、害虫の根絶が不完全だとして、さらに1年程度の防除継続が必要と判断した。対象の西区と南区にまたがる沿岸域は市内のサツマイモの中心的産地。今年に続き来年も栽培ができなくなる生産者のショックは大きく、離農拡大の引き金にならないか懸念が広がっている。

夏季のサツマイモ栽培ができなくなった山下勝彦部会長の畑。誘殺トラップを仕掛け、害虫根絶を目指す=12月上旬、浜松市西区
夏季のサツマイモ栽培ができなくなった山下勝彦部会長の畑。誘殺トラップを仕掛け、害虫根絶を目指す=12月上旬、浜松市西区
アリモドキゾウムシの成虫(農林水産省HPより)
アリモドキゾウムシの成虫(農林水産省HPより)
夏季のサツマイモ栽培ができなくなった山下勝彦部会長の畑。誘殺トラップを仕掛け、害虫根絶を目指す=12月上旬、浜松市西区
アリモドキゾウムシの成虫(農林水産省HPより)


離農拡大引き金を懸念  アリモドキゾウムシはイモの食味を著しく落とす害虫。サツマイモを含むヒルガオ科植物を寄主にして、生産者も気づかないうちに短期間に繁殖する。昨年10月の発見以降、東西5キロ余りの区域に仕掛けた誘殺トラップで、今年3月までに470匹が見つかった。
 同省は3月に本州で初となる緊急防除の実施を決め、発見区域でヒルガオ科植物の作付けを禁止。JAとぴあ浜松甘藷(かんしょ)部会の約90人の域内生産者は、1年での防除完了を目指して栽培を自粛し、野生のハマヒルガオを除去したり放置された野菜くずを片付けたりと奮闘した。
 防除開始以降、新たな虫の発見報告は絶え、作付け再開の期待が広がったが、10月に畑に残っていた古いサツマイモくずの中から成虫と幼虫が見つかり、国の検査で前年の群れの残存個体だと判定された。
 甘藷部会の山下勝彦部会長(西区)は「生産者は夏の間、みんなで寄主植物を残らず抜いた。根絶できたと思ったのだが…」と肩を落とす。専門家会議は野菜くずの撤去をさらに徹底するよう求め、県や生産者は防除継続に従う方針を確認した。
 同部会の大半はタマネギとの二毛作で生計を立てていて、サツマイモ分の減収は痛手だ。大規模営農のため設備投資したばかりの若手生産者の経営に影響を与えかねず、2年連続の自粛で一部の高齢生産者には営農意欲の減退も見える。
 農水省植物防疫課によると、アリモドキゾウムシの緊急防除はこれまで高知と鹿児島県で計6回行われた。浜松は過去の発生地に比べて農地が広い上、虫が潜伏しやすい家屋や庭も多い。同課の担当者は「防除の難易度が高いが、失敗すると被害が一気に広がる危険もある。地域の協力でこれ以上の被害を食い止めてほしい」と呼びかける。
 (浜松総局・宮坂武司)

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