小学校の複式学級化課題多く 沼津の第一、第二中校区統合 議論再開

 沼津市内で最も児童数が少ない千本小は来年度、同一学級に2学年を収容する複式学級の導入が低学年で見込まれている。教育の質の担保や教員の負担増への対策が急務だが、同校がある第二中校区は第一中校区との統合を巡る方針が2021年に白紙化。今秋、学識経験者や住民、保護者らによる統合に向けた議論が再始動したが、進展には時間がかかりそうだ。

2学年合同で体育の授業に臨む児童。2学年10人の児童に対し、教員2人と支援員1人が見守る=沼津市の千本小
2学年合同で体育の授業に臨む児童。2学年10人の児童に対し、教員2人と支援員1人が見守る=沼津市の千本小


 同小の本年度の新入学児童は3人。体育の授業は既に2学年合同で行われている。12月初旬の授業では、教員2人と支援員に見守られながら、10人でドッジボールを楽しんだ。
 全校児童58人の同校は全学年が単学級で、一つの階に全学級の教室が並ぶ。複式学級となると、同校では本年度から2人少ない5人で全学年を指導し、学校を運営することになる。同校は「1人で2学年分の指導を行うため、教育の質担保と教員の負担増の対策が必要」とし、すでに複式学級を導入した学校の視察や情報収集に力を入れている。
 複式学級での指導経験がある教員によると、上の学年のリーダーシップが育つ利点があるが、学級内に常に上下関係が存在し、児童が気を使い合うという。「小規模校の一番の課題は他者との関わり。地域活性化を懸念する住民の意見も理解できるが、子どもの学びを中心に議論を進めたほうが良い」と話した。
 10月下旬、議論を再開した「学校の未来を考える会」の初会合では、学識経験者のほか自治会や校区内の第二中、第二小、千本小のPTA、校区内の未就学児の保護者ら21人が意見を出し合った。学校を教育施設として捉える市教委や保護者と、地域の防災拠点と捉える住民の間で、視点の相違が浮き彫りになった。
 第2回は19日に開く。統合の方針が決まった場合、第2段階として地区推進委員会を開き、開校に向けた具体案を協議する。市教委は学校の規模と配置の適正化に向けた住民説明会を浮島中と大平中の2校区でも実施している。

 記者の目=学校の現状 住民も認知を
 きめ細かな指導が小規模校の利点とされるが、あまりに小規模だと人間関係に逃げ場がなく、行事に制約も生じる。複式学級の解消に向け、動きを加速すべきだ。
 保護者と住民の間で視点が食い違う背景には、加速度的に進む少子化で急変する子どもの教育環境の現状を、保護者以外の大人が認識できていないことがあるだろう。学校と住民が協同するコミュニティースクールの浸透に伴い、防災や福祉機能としての意義を強調する住民の声が強まり、本来の教育機関としての機能がないがしろにされているように見える。学びの場としての環境整備を第一に議論する必要がある。
 市教委は、学校がなくなることを懸念する住民に明確に答えていないとの声もあり、これが不信感の一因で議論の遅延につながっている。防災や福祉など他分野の部署も交え、広く住民の不安に応えてほしい。
 (東部総局・菊地真生)

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