静岡市駿河区池田 住宅街にすっくと現存 「火の見櫓」編②【アートのほそ道】

 しずてつジャストラインのバス停「池田」のほど近く、静岡市消防団静岡第14分団の器具置き場の敷地に、コンクリートの基礎からすっくとそびえる火の見櫓[やぐら]。周辺はアパートや、ファミリー向けの一戸建てが立ち並ぶ。静岡県内では珍しい、住宅街に現存する1基だ。

戦後間もなく設置された火の見櫓。それ以前は同じ場所に木製の火の見櫓があったという=静岡市駿河区池田
戦後間もなく設置された火の見櫓。それ以前は同じ場所に木製の火の見櫓があったという=静岡市駿河区池田
見張り台に現存する半鐘。夜の作業に備えたとみられる照明器具もある
見張り台に現存する半鐘。夜の作業に備えたとみられる照明器具もある
戦後間もなく設置された火の見櫓。それ以前は同じ場所に木製の火の見櫓があったという=静岡市駿河区池田
見張り台に現存する半鐘。夜の作業に備えたとみられる照明器具もある

 交点に丸い金物を用いたX型のブレース(筋交い)を8段重ね、バスケット型の見張り台をいただく。四角すいの屋根の下には半鐘も健在だ。由来や大きさについて、静岡市消防局には記録がない。中部電力パワーグリッド静岡支社によると、隣接する電柱の高さは約13・5メートル。火の見櫓は15メートルを超えるとみられる。
 「昭和25(1950)年頃だったと思う」と設立の記憶をたどるのは、近隣に住む窪田昭三さん(94)。終戦後に静岡に戻り、消防団員として活躍していた。火の見櫓の材料は当時の中部電力静岡支社から譲り受けたものという。送電用の鉄塔だった可能性もある。組み立ては団員が一昼夜かけて行った。窪田さんは屋根の設置を担当した。
 現在は4台のスピーカーから地域の情報を伝えるのが役目。登頂は禁止されている。第14分団の機能別消防団員の寺尾孝一さん(74)は「平成に入り、撤去の話もあった」と振り返る。だが、住民の反対で命脈を保った。「物心付いた時から身近にある火の見櫓。ない風景が想像できない」
 (教育文化部・橋爪充)

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