記者コラム「清流」 消えゆく巡礼道と内省

 静岡県東部在住のアーティストと僧侶の3人が、駿河と伊豆をまたぐ江戸時代の巡礼道「駿河伊豆両国横道三十三観音霊場」を歩き、絵と文で記録するアートプロジェクト「YOKODO33」に取り組んでいる。
 横道の巡礼は明治以降に衰退し、現在その存在を知る人はほとんどいない。巡礼の過程をスケッチする美術家さとうなつみさんは、「巡礼道がなくなった今、信仰が別の形に移ったのでは」と思いを巡らせる。
 近年流行する「推し活」は信仰に代わり、現代人の心のよりどころになりつつある。金銭を支払うことで生身の人間を応援する推し活は刺激的だが、加速する資本主義にのみ込まれやすく、のめり込むリスクも叫ばれている。巡礼道を歩き直すことは、現代人が失った内省の時間を取り戻す試みなのかもしれない。
(東部総局・菊地真生)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞