クリスマス「書き入れ時なのに苦しい」 静岡県内ケーキ店 材料高騰で値上げ、遠のく客足

 書き入れ時のクリスマスや年末年始のシーズンを迎え、追い込みをかける洋菓子業界。今年は例年になく卵やバターなどの原料高騰化により、静岡県内ケーキ店は苦境に立たされている。今年は値上げで対応するが、客数は減り利益を圧迫。関係者は「一番気合が入る時期。でも、無理をして注文をとっても利益は上がらない。予約で製造量を制限するしかない」と苦慮する。

書き入れ時を迎えた洋菓子業界。多くの店が値上げや予約販売に限定するなどの対応をする=23日午前、長泉町の「ハピネス」
書き入れ時を迎えた洋菓子業界。多くの店が値上げや予約販売に限定するなどの対応をする=23日午前、長泉町の「ハピネス」


 タルトが人気の「パティスリール・タン」(浜松市西区)は輸入品を原材料に多く使う上、卵は前年比20%、包材は同10%上昇し、通常販売のケーキやクリスマスケーキの値上げに踏み切った。谷口哲郎オーナー(60)は「今年は新型コロナが5類に移行されて『巣ごもり需要』が無くなった。また、暑い日が多かったので、全体的にケーキの売れ行きが悪かった」と振り返った。
 「バターが入りづらく、来年1月上旬にかけて品薄になる可能性もある」と話すのは長泉町ブランド認定店の「ハピネス」の小松大輔店長(48)。苦肉の策でマーガリンを使う案もあったが、「記念日に自分の店を選んでくれるお客さんを裏切ることはできない。お店に出すものは妥協したくない」と値上げをして対応。年末年始は製造量を調整しながらケーキや焼き菓子を販売するという。
 1月には乳製品が3~4%ほど値上げされる。それに伴い、さらに5%ほどの値上げを考えているという「シューマン」(静岡市駿河区)を運営する園田幸司社長(60)は「経営が厳しい。客に負担がかかるから、できるだけ安くおいしいものを届けたいのに」と声のトーンを下げた。クリスマスケーキは、ホールは予約に限り、当日は小物のケーキを限定販売する。
 県洋菓子協会の天野又一会長(72)は「業界全体として『幸せを売っている』という共通認識で、数%の値上げで多くの店が対応しているが、踏ん張るのにも限界がある」と話した。
 (東部総局・天羽桜子)

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