記者コラム「清流」 呼子坂のロマンス
富士市原田地区にある「呼子坂」。名称の由来は、富士川合戦の際に源氏の軍勢がこの坂に陣を敷き、呼子笛を吹いて軍勢を集めたというのが定説だ。地元の小学校で地域学習の授業があり、博物館の職員が別の説についても触れていた。
田子の浦の女性と愛鷹山の向こうにいた青年。恋仲の2人は坂を待ち合わせ場所にしていたが、青年が通えなくなり疎遠に。坂には女性の青年を呼ぶ悲しげな声だけが響いていた-。
戦場か、あるいはロマンスの舞台か。文脈や歴史によってその土地の見え方が変わるのは、アニメのモデル地を巡る「聖地巡礼」や、戦跡や被災地を訪れる「ダークツーリズム」など、近年の観光形態にも通じる。
「恋バナじゃん」と興味津々の児童たちを見ると、授業は地域の魅力を広げることに貢献したようだ。
(富士支局・沢口翔斗)