秋葉信仰示す常夜灯 一冊に 浜松市浜北文化協郷土史部 「浜北の記録残したい」 風習も調査、編集

 浜松市浜北文化協会浜北郷土史部がこのほど、「火防(ひぶせ)の神」をまつる秋葉神社(天竜区)への道しるべである常夜灯の位置や形状、地域に伝わる風習などをまとめた本「浜北の龍燈(りゅうとう)・秋葉山常夜灯」(A5判128ページ)を発行した。調査、編集に5年を費やした労作で、秋葉信仰が浜北地域でも江戸期から現在まで色濃く残ることがうかがえる。

「浜北の龍燈・秋葉山常夜灯」の本を手にする浜松市浜北文化協会浜北郷土史部のメンバー=12月下旬、同市浜北区
「浜北の龍燈・秋葉山常夜灯」の本を手にする浜松市浜北文化協会浜北郷土史部のメンバー=12月下旬、同市浜北区


 江戸期や明治、大正時代に石材などで建てられた常夜灯と、常夜灯を囲う雨よけの龍燈について浜北区内の約110カ所を地図、写真付きで紹介した。市指定有形文化財の同区上島にある龍燈は竜、獅子などの彫刻を説明した。
 龍燈、常夜灯そのものに加え、地元の祭りや風習も記録した。常夜灯周辺の住民代表者が秋葉神社に参拝して受け取った札を住民に配っていたり、毎年1月にしめ縄などを準備して祭礼を行ったりしていると紹介。当番の家で夜通し起きて祈りをささげる「お日待ち」という一部地区に残る風習も解説した。メンバーの青嶋勝彦さん(83)は「子どものころは浜北の多くの家庭でお日待ちがあった。防火に対する願いも強かったということだろう」と推察する。
 2019年から始まった調査は新型コロナ禍とも重なり、訪問調査がためらわれることもあった。岡本恒夫部長(76)は「大変な時期でも風習について細かに説明してくれる地元住民に助けられた」と感謝する。高齢のメンバーが多く、活動開始時にいた部員の14人中2人が発行までに亡くなった。岡本部長は「生き字引のような頼りになる長老と熱心に取り組む部員だった。2人のためにも本が完成できて良かった」と語る。
 浜北区は24年1月、市の行政区再編により浜名区へ地名が変わる。岡本部長は「龍燈と常夜灯は浜北の歴史を強く伝える物の一つ。地名は変わっても記録は残したい」と強調する。
 本は1月20、21の両日、浜北区の浜北文化センターで開かれるイベント「はまきたまるごと文化フェス」で約500部を販売する。1部800円。
 (浜松総局・松浦直希)

 秋葉信仰 江戸時代中期、火災への恐れから秋葉山の「火防(ひぶせ)の神」に対する信仰が全国的に広まった。住民組織の代表者が参詣して札を受け取るなどした。例年12月15、16日には浜松市天竜区の秋葉山本宮秋葉神社で火まつりが営まれている。

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