SPAC1月から新作「ばらの騎士」 オペラを音楽喜劇に 宮城総監督×寺内亜矢子

 静岡県舞台芸術センター(SPAC)は世界の名作を届ける「秋→春のシーズン」の締めくくりとして2024年1月から、新作「ばらの騎士」を静岡市駿河区の静岡芸術劇場(グランシップ内)で上演する。宮城聰芸術総監督と俳優でもある寺内亜矢子が共同演出し、オペラを音楽喜劇に仕立てた。二人は「新年に華やかな作品を楽しんでほしい」と思いを込める。

共同演出した「ばらの騎士」について語る宮城聰芸術総監督(右)と寺内亜矢子=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
共同演出した「ばらの騎士」について語る宮城聰芸術総監督(右)と寺内亜矢子=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
「ばらの騎士サロン」参加者を前に稽古する俳優ら
「ばらの騎士サロン」参加者を前に稽古する俳優ら
共同演出した「ばらの騎士」について語る宮城聰芸術総監督(右)と寺内亜矢子=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
「ばらの騎士サロン」参加者を前に稽古する俳優ら

 「ばらの騎士」は作家フーゴー・フォン・ホーフマンスタールと作曲家リヒャルト・シュトラウスによるオペラで、1911年にドイツで初演された。SPAC版は舞台設定を1700年代のウィーンから明治時代の日本に置き換え、恋の駆け引きをユーモラスに描く。音楽は指揮者やチェンバロ奏者などとして活躍する根本卓也が手がけ、登場人物の心の機微を俳優の生演奏で表現する。
 宮城総監督がSPACで共同演出するのは初めて。後進育成と多様な俳優との向き合い方の再考を目的に、寺内と手を組んだ。主に自身が台本作成と音楽を加えた構成を、寺内が演技面を担当。「(寺内は)俳優一人一人が集中できるよう導いている。2人で演出する分、俳優からもさまざまな疑問が持ち出され、自分のやり方を相対化できている」と手応えを語る。
 近年は高校生を対象とした1年制の演劇塾「SPAC演劇アカデミー」で講師を務める寺内は「若手のことを考えると、一緒に作品をつくりながら『楽しかった』と思える体験を積み重ねることが大切だと思う」と演出への姿勢を説明。「俳優それぞれの視点や技術、コンビネーションが、今回はユニークなドタバタ劇やシリアスな雰囲気を生み出している。改めてSPACの俳優はすごいなと感じている」
 (教育文化部・鈴木明芽)
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 公演は1月7、8、13、14、20、21日と3月10日。各回午後2時開演。問い合わせはSPACチケットセンター<電054(202)3399>へ。

創作過程も楽しんで 市民参加の「サロン」初実施
 「ばらの騎士」の上演に合わせて、SPACは市民が演劇の創作過程までも楽しめる有料企画を初めて実施している。
 「ばらの騎士サロン」と銘打った企画。県内外の27人が作品づくりの“伴走者”となり、9月から来年1月まで、稽古を見学したり制作陣と交流したりしている。単発で参加者を募集する企画もある。
 宮城聰芸術総監督は「アパレル業界などでは、商品の原材料や製造工程といったストーリーも含めた販売方法が主流になりつつある」と社会の潮流を意識。公演初日から千秋楽に向かって役者の成長や作品の変化が楽しめる演劇は「プロセスをシェアするポテンシャルが高い」と企画意図を語った。

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